手作り、量り売りの「石黒の飴」

  昔ながらの味も24日閉店

 「この甘い香りが市川の香り。なくなるのは寂しい」―。JR市川駅のほど近く、真間銀座通りで60年間にわたって暖簾(のれん)を掲げてきた昔ながらの飴(あめ)店「石黒の飴」が24日で閉店する。手軽に、ちょっとした〝幸せ〟をくれる飴は年齢、性別を問わず愛されてきた。店先では閉店を惜しむ会話が繰り返されている。
 湿気を防ぐ特注の商品ケース「番重」に入った色とりどりの飴はおかみさんの真知田峰子さん(65)が量り売り=写真。子供のころを市川で過ごした能勢美也子さん(35)は「見ているだけで楽しい。子供もここの飴が好き」と娘の珠貴ちゃん(5)と飴を選ぶ。ほかにも「ここの飴を買ってもらえるから買い物について行った」「通学路で誘惑だった」「おじいちゃんに会いに行く時いつも買う」など引きつけられている人は多い。

 15種類の飴は、店主・真知田達郎さん(69)がエアコンをかけても38度の暑さの中で手作り。材料は白砂糖と白ザラメと水、味付けの黒糖やアンズなど。大量生産の飴で多く使われる水飴は「原価は下がるが、上品な甘さが出ない」とつなぎ程度。銅鍋で焦げる直前まで煮詰めた飴は水に浮かべたタライで冷やすが煮詰め加減、冷やし加減が難しく、タイミングはほんの数秒という。冷やした飴は棒状にして〝球断機〟へ。機械の上下をこすり合わせると、宝石のように輝く飴玉がコロコロとこぼれ出す=写真。

 同店は、先代の故源三郎さんが東京下町の石黒本店から暖簾分けを受けて昭和の初めに開店。東京・小松川、市川真間駅そばを経て、戦後から現在の場所で店を構えてきた。

 閉店は前から決めていたこと。「20歳から始めて50年。健康なうちに自分の時間を大事に使わせてほしい」。達郎さんのがっしりとした手が少し休まる。

 問い合わせは同店(☎322・6459番)。営業は午前9時半―午後6時。日曜日と祝日は休み。

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