市川よみうり

今週の人

好きなものを楽しみ集うことが街の文化

市川よみっ子運動を提唱する
井上 ひさしさん

     作家や画家、演出家など多くの文化人にゆかりのある市川。「芸術を日常生活に組み込んで楽しめる街の第一候補が市川。市民はこのことに気づくべきです」。
 子供のころ、節約して注文した本が届くまでの期待感、包みをほどいた時の感動はいまも続いている。「高校生の時、『映画監督かシナリオライターになりたい』と言うと、映画や芝居を観て単位をくれた先生がいた。勉強をあきらめたから、いまの僕がある」という文字・活字文化推進機構の世話人。だからこそ、「日本の、市川の未来を具体的に語ると子供に尽きる。いまの子供たちは受験やテレビ、ゲーム、稽古ごとなどで忙し過ぎる。もうちょっと子供らしく、地域で自由に過ごせる時間が必要。そのことを大人たちに気づいてほしい」と、読書と地域交流、療養中の子供への支援を結びつける、日本に他の例がない「市川よみっ子運動」構想を提唱する。
 「どんな人でも好きなものがあるはず。それを楽しめばいい。それが集って街の文化は深まり、互いに広がっていくんです」。昭和42年から20年間、市川市国分町(現在北国分)に住んだ72歳。「僕の土台は市川でつくった。やり残さないよう、恩返しをしなくちゃ」。
(2007年3月2日)
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今週の人

喜んでもらえれば音楽にジャンルは不要

市川あさひ荘でボランティアのコンサートを100回開催
宮崎 滋さん

    昭和50年、24歳で日本音楽コンクール作曲部門の第1位を獲得し、作曲家としてデビュー。その後もピアニストや指揮者、音楽評論家など、活躍の幅を広げている。
   母を亡くし、父が病気で倒れた平成6年、「若いころ親に教わったような曲を、せめて父に聴かせたい」と、クラシックから歌謡曲、民謡まで幅広く演奏する「おしゃべりコンサート」を船橋市で開催。皆が感動する姿を見て、「喜んでくれればいい。音楽にジャンルを設けるのがむなしく感じるようになった」と、クラシックへのこだわりがなくなった。
 父の入所を機に、あさひ荘で始めたコンサートは、「みんなが喜んでくれるのでやめられない」と父の死後も継続。「当初は泣いて喜ぶ人が多かったが、最近は笑い声が増えた。元気になったのかな」とやりがいを感じている。
 ボランティアを通じて得たものは、聞き手や歌い手との多くの出会い。日本の歌を演奏することで“日本語のきれいさ”に気付き、能、歌舞伎、文楽という趣味をもつようにもなった。今後も、「指が動く限りひき続けたい」という作曲やコンサートを通じ、「たくさんの出会いを重ね、深い感動の世界を探していきたい」。
(2007年3月9日)
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今週の人

いつかは骨太なストーリーの長編絵本を

2010年千葉国体キャラクター“チーバくん”をデザイン
坂崎 千春さん

    知らない人はいないだろう。JR東日本のICカード、スイカのキャラクター“スイッピー”の生みの親でもある。イラストは、「これでいこう!」と構想を固めるまでは産みの苦しみを味わうが、あとはスイスイと描く。暇があればいつも描いているというタイプではなく、きちんと作品づくりをするプロフェッショナル派。「無理矢理だといい作品にはならないんです」。
 好きな動物をシンプルでユーモラスに描いているほか、絵本やエッセイも書く。読書が好きで、童話から名作、推理小説、SF、コミックと幅広い。市川市中央図書館にもよく通った。子供のころは、自分の本に図書カードをつけて貸し借りする図書館ごっこが大好きだった。そんな読書好きが作品づくりで大切にしているのは物語性。「チーバくんは犬じゃないんです。千葉に生息する架空の生き物で…」。キャラクターが生き生きとして見えてくる。絵本を書く時も物語から。「骨太なストーリーが好き。いつか、長編の絵本をつくりたい」。
 本八幡生まれの39歳。実家に帰り、葛飾八幡宮を詣でるほか、ふるさとの夏の花火も自慢。コミックを読むこと、フィギュアスケートを見るのが目下の楽しみ。「荒川静香さんや真央ちゃんも見ました。すごく演技がきれい」。仕事の合間をぬって世界選手権のリンクに出かけていく。
(2007年3月16日)
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今週の人

生き物とかかわり合う大切さを伝えたい

文科省「地道にがんばっている先生」表彰を受賞
越川 重治さん

ただ教科書をなぞるだけでなく、自分の目で生きる姿を見させたい―。
 51歳、「生徒は自分の鏡」という県立国分高校の生物教諭。「自分が頑張れば生徒はちゃんと反応してくる。お金じゃない報酬、こんな職業はほかにない」と教諭の道へ。だが生徒は10年後、授業で学んだことを忘れる。「自分の授業って何なのか」。こうして始まったツバメの巣の観察や、家族とのアカガエルの飼育から、生徒は“生死”を感じ取る。「生き物を見ることは、最後は自分を見ることになる。鏡を見てもわからないことが、生き物との比較で見えてくる」。巣の観察を通じて家人からごちそうになる生徒もおり、地域や家庭の交流にもつながる。高校ではニワトリの解剖も実施。「自分が食べているものは何なのか。誰かが殺し、さばき、食品になる。一生に一度でも、命をいただいて生きていることを考えてほしい」。
 専門はムクドリやツバメなどの鳥類。「いつか、都市の鳥を題材に子供に読んでもらえる本を書きたい」。ムクドリは害鳥というイメージが強いが、「シャイな鳥、図太い鳥など個性はいろいろで人間と同じ。レッテルを張らず、人間と生き物がかかわり合って生きていくことの大切さを伝えたい」。
(2007年3月23日)
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