「一家に1冊」市川市史全6巻刊行
記念講演会に歴史ファン集まる
計画から約20年「歴史編Ⅰ」で完

全6巻が刊行された市川市史。奥は旧史

「歴史編Ⅰ」の刊行記念で講演する編さん委員会の吉村武彦委員長
市川市史の「歴史編Ⅰ 地形・地質とその環境」が今春刊行され、2008(平成20)年度の1冊目「自然編 都市化と生きもの」の刊行から全6巻が出そろった。旧市史が一般販売されずに教育、研究用だったのに対し、新たな市史は、市民にわかりやすく親しみやすい内容。重厚な製本ながら価格を1千円に抑え、PDF版を整備していくなど、手軽に読めるようにした。6月下旬には、「歴史編Ⅰ」の刊行記念講演会も開かれ、編さん、編集委員や執筆に関わった専門家が、市史の魅力を伝えた。
■研究用の旧市史
旧市史は、1960年代後半から編さんされ、77(昭和52)年の年表で完結した。
当時は、他の県史、市史も、「県内、市内に残る古文書や文化的史料を保存整理し、後世に伝える目的があった」(市文学課の大野和則さん)という。旧市川市史も、通史編4巻に加え、史料編3巻4冊の構成で、図書館や教育、研究施設などに置かれた。
■「電子版」も整備
その後、遺跡の発掘、調査など、新たな史実や環境の変化を踏まえた新たな市史の編さんが必要になり、2009(平成21)年まで3期12年務めた千葉光行市長時代に、刊行計画が立てられ、準備委員会が発足。
市史は、▼通巻6の「自然編―都市化と生きもの」が2008(平成20)年度▼通巻3の「歴史編Ⅲ まつりごとの展開」が18年度▼通巻4の「歴史編Ⅳ 変貌する市川市域」が19(令和元)年度▼通巻5の「民俗編 台地・町・海辺の暮らしと伝承」が20年度▼通巻2の「歴史編Ⅱ ムラとマチ」が24年度―、そして、通巻1の「歴史編Ⅰ 地形・地質とその環境」が、今年3月に刊行された。
少ないもので350ページ、多いもので500ページ近くある全カラーの書籍だが、定価はすべて1千円。市文学課長の堀優子さんによれば、1冊目の自然編のみ、「価格を抑えて市民が手にしやすいものにする」との方針を受け、刊行当初の価格から改定し、1千円に値下げしたという。
1冊目の刊行からすでに20年近く経ち、完売した巻も出ているため、「情報のデジタル化の流れに合わせ、書籍をPDF化した電子版の作成を進め、順次インターネットで公開していく」(堀さん)としている。
■満席の記念講演
6月21日に、市文学ミュージアムのグリーンスタジオで開かれた「歴史編Ⅰ」刊行記念講演会には、市井の専門家や歴史ファン、市史に関心を持つ市民200人以上が集まった。
売店では、新刊の「歴史編Ⅰ」だけでなく、手持ちのない、すでに刊行された巻を買い求める人も多くいて、関心の高さが伺えた。
新刊の「歴史編Ⅰ」は、市川の歴史の舞台になる海や大地の形成、植生、自然災害などの環境についてまとめたもので、「第1章 市川市の地形と地質」「第2章 化石が語る古環境」「第3章 環境変化と人間活動」「第4章 市川の自然災害」を紹介。
第4章では、「古文書記録にみる災害史」から、「江戸時代の災害」「市川を変えた明治・大正期の災害」「都市化と現代の災害」と、時代を追って、市川の水害、高潮、冷害などを取り上げたほか、防災、減災のため、ハザードマップの活用もテーマアップ。附篇(付編)には、自然災害年表も掲載し、興味深い。
講演は、▼明治大学の杉原重夫名誉教授「大鳥圭介と地学研究」▼千葉大学の百原新教授「植物遺体から復元される市川市の人と植生の関わりの歴史」▼国学院大学の川名禎准教授「歴史にみる市川市の自然災害」▼早稲田大学の久保純子教授「自然災害とハザードマップ」―が登壇。
市川市史編さん委員会の吉村武彦委員長(明治大学名誉教授)は「準備委員会から数えて約20年になる。新しい遺跡の発掘など、想定外のこともあり、長期間にわたった」と振り返った。
さらに、「刊行した意義が半減しないよう、今後の活用を考えていく必要がある。デジタル化によって、文化施設とリンクするなど、AI時代にふさわしい、下総の国の首都、また、文化都市市川ならではの市史を踏まえた街づくりにつなげてほしい。『一家に1冊』というような市史になれば…」と要望。
田中甲市長はあいさつで、「歴史の中に私たちの生活がある。新しい未来をつくるために、温故知新で歴史を見直し、新しい市川市の歴史をつくっていきたい」と語った。
ページのトップ