市川よみうり連載企画

FM



イン<1>


「『コミュニティーFMの時代』を読んで、いちかわエフエムを聞いてみましたが、聞こえてくるのは常連リスナーとパーソナリティーのコミュニケーション。その程度のことなら、あえてFMの電波を使わなくても、インターネットのホームページですでに行われていますよ」(45歳・パソ通の会社員)。ご意見ありがとうございました。
 情報の波をサーフィン、気に入ったホームページにはダイビング…。「パソ通の会社員」さんのことばに誘われてパソコン上のネット・コミュニケーションをのぞいてみた。なるほど、ホームページの「掲示板」には、コミュニティー放送で聞いたようなことばのやりとりが延々と続いている。ほとんどの人が匿名(ハンドルネーム)を使っている。

 おや、発言があまりに過激になりすぎて「管理人」に『ネチケットを守りなさい』と叱られている人が…。昨日まであったコメントが、今日は削除、といることもしばしば。
 『誹謗中傷してはいけない』など、ネットコミュニケーションにもいろいろルールが設けられている。
 市川市内のパソコンスクールに通う20代学生2人に、新しいメディアとの付き合い方を聞いてみた。
 「将来はテレビカメラマンになりたい」パソ通歴3年のY君と、「理工系のコンピューター学科で勉強中」のGさん。

 2人は「新しいメディアは世界をひろげてくれる」と口をそろえる。欲しい情報はインターネットで検索。仲間のホームページをのぞいたり、メーリングリストで意見交換。でも、自らが情報の発信者となるのは、「まだ先の話かな」「何を発信するか、いま模索しているところ」。
 −では将来的に、どんな情報を発信してみたい?
 Y「ボクは自分の撮った画像をホームページに載せたい」
 −それで、たくさんの人に見てもらう?
 Y「いいえ、仲間だけに知れればいいかなあ…と。そのほうが気楽でいいです。仲間のホームページも、内輪でしか分からない、濃い内容で盛り上がっていますよ。外の人が見たら『何だコレ?』と思うかもしれませんが…」

 −情報収集は積極的に、だけど自己発信は共通の趣味を持つ仲間内だけでということかな?
 G「ハイ、自分が専門にしていることを、興味ある人に伝えられればいい」
 −広く、多くの人に伝えたいというのではないのですね。
 G「ハイ」      (つづく)



イン<2>


 さきごろJR本八幡駅南口にオープンした「いちかわ情報プラザ」をのぞいてみた。1階の「インターネットカフェ」でコーヒーを飲みながらパソコンで1時間遊んだ後、2階の「市川市電子市役所」を見学。テレビ電話機能の付いたパソコンを使って、住民票を取り寄せたり、JR本八幡駅周辺にある市営駐輪場の空き状況を調べたりした。

 平日の午前11時、電子市役所に人影はまばら。職員が親切丁寧にパソコンの使い方を教えてくれた。
 「住民票を取る場合は、まずトップ画面の『証明書発行』をクリック、次に『住民票の写し』をクリック、出てきた画面の所定の位置に住所・氏名などを打ち込んでください」
 −ハイ、打ち込みました。次は?
 「これで手続きは完了。あちらのカウンターで住民票を受け取れますよ」
 待つこと2分。入り口近くのカウンターでサインして、3百円を払って、住民票を手に入れた!
 −早ワザですね。
 「ハハハ…、込み合えばもっと時間がかかるかもしれませんが…。ここのモット−は『行政サービスをもっと便利に』」
 −市民の反応は?
 「『申請が手書きからパソコン入力に変わっただけじゃないか』と言う人もいますが、オンラインを使ってテレビ電話で直接、担当職員と話をすることもできるんです。試してみますか?」
 −ハイ。
 自転車対策課にテレビ電話をつなげた。突然、画面右上に担当職員の顔。画面中央には駐輪場の地図。パソコン脇に設置された受話器を使って話をする。担当職員は地図に赤マルをつけながら、
 「ここと、ここが空いていますよ」
 −ありがとうございました。
 「電子市役所は、新しい行政サービスの実験場。いろいろ試してみてください」

 そんな職員の言葉に甘えて、「電子行政情報案内」にもチャレンジ。ビデオ映像でゴミ処理の様子を見た。知りたい情報を引き出せる検索機能も付いている。市政情報番組「エコーいちかわ」を放送している「いちかわエフエム」を検索してみると…。
 数件ヒット! その中には「…シンプルな情報を多くの人にダイレクトに伝達でき、インターネットユーザーとの親和性も高い市民メディア…」という自局PRメッセージが。
 「親和性」=親しみ結び付きやすい性質=『広辞苑』。コミュニティー放送はインターネットユーザーと相性がいいということかな ?    (つづく)



イン<3>


 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などに自分の意見や感想を伝えたいとき、アナタはどんなコミュニケーションツールを使いますか? 手紙・電話・ファクス・eメールなど、いまコミュニケーションの道具はよりどりみどり。その中で、本連載に寄せられる読者のメッセージは、ほとんどeメールです。あらためてeメールの普及にビックリしています。

 ちなみに、いちかわエフエムの場合、皆eメールの達人らしく、仕事上は「eメールを使いましょう」。時候のあいさつを省き、文章は簡潔に短く、用件のみ。よほど緊急のことがない限り、電話は使いません。
 『eメールには肉体も体臭も衣服も声も筆跡もない。そこにあるのはミもフタもないただの記号の羅列だ。情緒がゼロだから、仕事上の用件のやりとりにおいては圧倒的に効率的だ。その感覚に慣れると、電話での依頼がうっとおしく思えたり、電話をかけてくる人が図々しく思えたりするのだろう』(村上龍著『eメールの達人になる』集英社新書から抜粋)。

 ナルホド!
 では、同局の番組に寄せられるリスナーからのメッセージは? を問い合わせたところ一日平均で手紙5件、eメール40件、Fax30件、電話2件(平成12年度調べ)と回答があった。
 やはりeメールがトップ。ただし、こちらのeメールは、ビジネスメールとは正反対で情緒たっぷりの内容。文面も長い、長い! リスナーの感情や思いがつづられています。下読みをして一部を放送に乗せるパーソナリティーもいれば、全文を丁寧に読み上げるパーソナリティーもいます。どちらにしても、肉声が加わることで、eメールの文字は息を吹き返し、縦横無尽に電波を泳ぎ回ります。その様子を「まるでインターネットで、仲間内のやりとりを聴かされているようだ」と評する人もいますが…。

 現在、コミュニティー放送局は全国で152局。ほとんどの局がインターネットのホームページを持ち、そこから曲のリクエストやメッセ−ジが簡単に送れるようになっています。指示どおりにクリックして行けばメーラー(eメールを送受信するソフトウェア)が自動的に立ち上がります。
 さあ、アナタは電波に乗ることを前提に、どんなeメールを作成しますか?
 ビジネスメールのように味気ないのもイヤだし、といって感情を丸出しにするのもハズカシイなあ…。      (つづく)



イン<4>


 ときどきインターネットで、全国のラジオファンが集うホームページをのぞいてみる。そこにはコミュニティー放送のリスナー専用掲示板もあり、情報や意見の交換が活発に行われている。たとえば一人の匿名リスナーが掲示板に「〇〇でコミュニティー局が誕生します。みんなで応援しましょう!」と書き込むと、数日後には…。

 「あっ、そこの試験放送なら、もう聴いたよ」
 「けっこう遠くまで聴こえますね」
 「試験放送なのに、なかなか良い選曲をしていました」
 「本放送が楽しみですね」
 「ボランティア募集はまだやっているのかな」
 「もう締め切ったみたいですよ」と、情報が集まっている。
 熱心なファンは、旅先でもご当地のコミュニティー放送に耳を澄ましているようで、

 「ベリを集めています」
 「私のベリコレクションを見てください」というメッセージも。
 「ベリ」とは、「ベリカード=受信認定証」のこと。放送などの無線通信をキャッチしたとき、送信者に受信の日時・場所・状態・内容などを書いた「受信報告書」を送ると、そのお礼にもらえる認定証だ。放送局は競ってこの認定カードに趣向を凝らし、自局のイメージアップを図っている。
 ベリを集めながら、全国のコミュニティー放送を聴き比べていると、耳も肥えてくるのだろう。

 「コミュニティー放送の将来を考える」
 「リスナーを増やすにはどうすればいい」
 ときには「災害時に地元密着の緊急放送が本当にできるのか?」というテーマも飛び出し、インターネット上で激論が交わされることがある。

 「ラジオ番組は、一つひとつが芸術品だ」
 「おいおい、もっと気楽に考えようよ。コミュニティー放送なんだから」
 「いやそれは違う!コミュニティー放送だからこそ手を抜いてはいけない」
 「まあまあ、そんなに熱くならないで…」
 「ラジオを愛するあまり、つい興奮してしまった…」
 「で、要するに、〇〇さんの本当に言いたいことは何?」
 リスナーばかりでなく、コミュニティー放送局スタッフも登場する。
 「一生懸命やっている」
 「現場の状況は、こんな具合だ」
 管理人(ホームページ開設者)の目が行き届いているので、誹謗中傷の類はなく、マジメな討論が尽きない。     (つづく)    



イン<5>


 いちかわエフエムの男性パーソナリティーNクンが番組の中で、さきごろJR本八幡駅南口にできた「いちかわ情報プラザ」の話をしていました。話の中心は同プラザ1階にオープンした「インターネットカフェ」。今は第2次ネットカフェブームで、「最新型パソコンのショールーム感覚でのぞいてみてはいかがでしょうか。都内では…」とオシャレなコメント。さすが電脳世代、カッコイイ!

 確か、いちかわエフエムのスタジオは、本八幡駅北口の商業ビル7階でしたよね。話題の情報プラザは目と鼻の先。今度はNクン、2階まで上がって「まだ行ったことがない」という「電子市役所」のオシャレな使い方も教えてください。
 さて今回は、東菅野にお住まいの女性Tさん(76)の「電子市役所体験記」をご紹介しましょう。

 「若い人から『とても速くて便利』と聞いたものですから、印鑑証明を取りに行きました」とTさん。手続きはスムーズに運びましたか?
 「職員の指導に従っていると、機械(パソコン)の画面が次々に変わっていきます。そのうちに、『受話器を取ってください』と言われまして…」
 利用者と本庁窓口の担当職員をつなぐテレビ電話ですね。同プラザ自慢のブロードバンド(高速で大容量のデータを送受信できる技術。映像・音声などの通信に威力を発揮)を体感できたでしょ。
 「電話越しに生年月日や住所・名前を聞かれましたが…。私の言ったことが機械の画面にはなかなか文字になって出て来ない。その間、受話器をにぎってじっと画面とにらめっこ」
 おやっ、機械の故障ですか? それとも、文字の打ち込みがニガ手な窓口職員だったのでしょうか。
 「結局、証明書1枚を手に入れるまでに30分かかりました」

 う〜ん、ザンネン!高速感は味わえませんでしたね。便利感のほうはいかがですか? 
 「自分で文字の打ち込みができる人にとっては便利な所かもしれませんね。でも、機械がニガ手な私は、直接市役所の窓口に行ったほうがいいような気がします。テレビ電話は初めての体験で、面白かったです」

 テレビ電話は市役所のほかにもリハビリテーション病院や教育センターともラインが結ばれていて、相談・案内が受けられます。
 「市内のどこに行っても、窓口の機械化が進んでいますね。でもその陰でまごまごしている高齢者のことも忘れないで」とTさん。      (つづく)    



イン<>


 「…生きた情報は歩いて見つけてくるもののような気がしています。僕は、取材中心の番組にトライしています」。北海道のコミュニティー放送局のパーソナリティー・Nさんからeメールが届きました。ありがとうございます。「パークゴルフ」というスポーツを毎週2時間の番組でどう表現できるか−に挑戦しているNさん。
 「パークゴルフ」は「昭和58年、鳥取の『グランドゴルフ』を参考にして、北海道・十勝管内幕別町の公園で誕生したスポーツ。クラブとボールとティーとボールマーカーさえあれば、老若男女、誰でも気軽にプレ−を楽しむことが出来る。現在、道内には700を超えるコースがあり、道外・外国でも愛好者の広がりを見せている」(『パークゴルフ全ガイド』北海道新聞社編から抜粋)。

 「道内を旅しながら、747か所のコースを回った」というNさん。市川市でも、今年3月に「市川市パークゴルフ協会」が設立されました。今月末には「第1回親善交流大会(コンペ)」が開かれる予定です。
 コミュニティー放送は可聴範囲が限られているので、Nさんの番組をリアルタイムで聴くことができないのは残念ですが、これからも「人に会い、コースに出かけ、足で情報を集め、自分の目で確かめてきたことを基本とする」番組作りに頑張ってください! 

 コミュニティー放送はリスナーも交えた「自由な表現活動の実験場」と言えるでしょう。その「実験場」は、いま、全国で150か所を超えています
。  「実験」に参加しているパーソナリティーたちは、皆、思い思いのスタイルで「情報を発信!」。
 数々の創作活動で有名な糸井重里氏は、著書『インターネット的』(PHP新書)の中で次のように語っています。ちなみに、同氏がインターネット上に開設している「ほぼ日刊イトイ新聞」の一日のアクセス件数は、約35万件。

 「表現を職業にせずに、普通に生きている人々の『伝えたい』を、誰もバカにする権利なんてないし、そういうものの中から新しい表現や感動が生まれてくることを、邪魔したくない。どちらかといえば、そういう不細工だけれど、ちょっとだけ世の中を豊かにするかもしれない表現の産婆の役をしたいと思っています。(中略)自己満足が表出することを、ぼくは、肯定しています」

 コミュニティー放送も「インターネット的」ですね。いろいろな思いを飲み込んで、成長していくのでしょう。  






 深夜、いちかわエフエムの男性パーソナリティーが、高校時代の思い出を語っていた。「夏休みになると、みんな予備校に行くんですよ。クーラーが効いた教室は気持ち良くて居眠りなんかして…。そこで偶然、中学時代の友達と出会ったこともありました。こんな話、面白くないですか ?」。いえいえ、記者にも同じような出来事が…。

 もし、番組にeメールを送るとしたら、内容はこんなカンジかな ? 高校2年生の夏、予備校の大教室で講師が『平家物語』の「屋島の合戦」を解説している。『那須与一が扇の的を射落して、敵も味方もやんやの喝采。そのときの与一の装束は…』というあたりで講師の声が遠くなり、眠りに落ちた。気が付くと、テキストにはヨダレの跡。講義は終わり、生徒たちは皆、黙々と演習問題に取り組んでいる。
 ぼんやりした頭で斜め前方を見ると、懐かしい顔が笑っている。小学校のクラスメートだ。おーっ、恥ずかしい!あわてて握り直したシャープペンシルの感触が、いま、よみがえる…。これって何となく、個人情報を交換しているみたい。

 ちなみに、この夜の番組の「お題」(テーマ)は、「夏の日の過ち」。リスナーが共感して「おたより」(eメール・ファクス・はがき・電話)を送りやすいように、パーソナリティーは進んで自分の思い出を披露している。何となく話が詰まると、
 「では、曲、行きましょうか…」
 シンキングタイム。リスナーたちは曲を聴きながらeメールを書いているだろうか。「おたより」が届き始めると、番組がパッと活気づくんだけどね。「おたよりだけが頼りです」という県域放送のキャッチコピーを思い出す。

 それにしても、3時間のラジオ番組を一人で仕切れるチャンスなんて、めったにあるもんじゃないよ。企画・構成・選曲・機材操作・おしゃべりを、ぜんぶ一人でやる。本当にかっこいい! 
 アッ曲が終わった。
 記憶をたぐり寄せながら、さらに話を続けるパーソナリティー。エンディングまで、あと、少し。頑張れっ!
 「お題」を設定してリスナーから「おたより」を募り、若干時差のある対話形式で番組を進行させるのは、ラジオの得意とするところ。eメールやファクスの普及で、その時差はどんどんなくなっていく。自分のしゃべったことに、リスナーが即反応してくれると、うれしいでしょ。あ〜っ、番組終了。来週はいっぱい「おたより」が届くかな−。   



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 全国ネットのテレビ局が行っているモニターへの設問は「全体的な印象は?」「次回もこの番組を見たいか?」「良いところ」「悪いところ」「今後に望むこと、または改善の仕方について」「家族の意見は?」など。そんなテレビ局の問いかけに、年齢・性別・職業・家族構成が異なるモニターたち(一般公募)は…。

 ある在京局がまとめた小冊子『モニターリポート』は、かなり読みごたえがある。
 「面白かった! 笑いの内容が今日的なのがいい」
 「話の展開が計算されていて、前半と後半のつながりに無理がなかった」
 「日常生活で避けて通れない問題が、さりげなく提示されていた」
 「ベテラン俳優が、『演技』というより『地のまま』の若手をリードし、番組を引き締めていた」など「良いところ」を列挙する一方で、
 「リポーターは、中立を守るのが基本でしょう。特権を利用して『裁判官』にならないで。思い込み、感動の安売りはしないで」
 「…この手の番組が飽きられる原因は、一度ウケたものをしつこく繰り返すからだ」
 「一方的にまくしたてるような情報の押し売りは不愉快」など辛口批評も載せている。
 コミュニティー放送にも、「県域放送と比較してはいけない」という条件付きで、聴取後の感想をまとめたリポートがある。
 ゼミで放送を勉強する日大生たちが、全国のコミュニティー放送(56局)から番組を録音したテープを送ってもらい、それを丹念に検証したものだ。

 パーソナリティーがどんな曲をかけ、どんなおしゃべりをしたかが分刻みで記録され、感想が添えられている。こちらもなかなか読みごたえがある。
 総じて、「構成がしっかりしている」「選曲の良い」番組は好評。
 裏付けとして、
 「パーソナリティーの発言の中に、局と市民の結び付きの強さが感じられる」
 「パーソナリティーの個性が際立つ」
 「何とも言えないほのぼの感がただよってくる」
 「手づくりの感じが出ている」
 「町の人たちが手を取り合い頑張っている姿勢がうかがえる」番組はポイントが高い。

 マイナス面では、
 「コピー情報が多い」
 「シロウトっぽいのがいいと言っても限度がある。せめてお知らせの原稿くらいは確認(下読み)してもらいたい。少しの努力で、もっとずっといい番組になると思う」。核心をついている。     (つづく)   



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 市川市に住む男性Aさん(30代・自営業)とBさん(20代・学生)に、1週間(7月1日−7日)、いちかわエフエムのモニターをお願いした。番組名は指定せず、毎日同局を2時間聴き、その感想を語ってもらった。「いつも仕事をしながら県域FMで音楽を聴いている」Aさんも、「深夜放送オタク」のBさんも、いちかわエフエムの放送を聴くのは初めて。

 −まず、全体的な印象は?
 A「アットホームな雰囲気。自分も『パーソナリティーのおじさん』になれそうな気がした」
 B「シュートのないサッカーの試合を見せられているようなカンジだった」
 −良いところは?
 A「音質が良かった。音楽は、クラシックからロックまで、選曲にこだわりが感じられた。地元の話題に親近感」
 B「パーソナリティーのしゃべりがゆっくりで、聴き取りやすかった」

 −悪いところは?
 A「自己流」
 B「『決定打』に欠ける」
 −聴取中に曲のリクエストや「おたより」を出したいと思ったか ?
 A「出せばすぐに答えてくれそうな感じはしたが…」
 B「出したいと思う『テーマ』が無かった」

 −今後も続けて聴きたい番組はあったか?
 A「何とも言えない」
 B「構成のしっかりした番組、今後に期待できそうな番組がいくつかあった」
 −同局に望むこと、または改善の仕方について。
 A「パーソナリティーは、『自分がリスナーならどんな番組を聴きたいか』を考えるといい」
 B「市川市では、FM局だけでも7〜8局聴取できる。それらと同一線上に並んでいるのだから、『比較するな』はムリな話。競い合いの中で、コミュニティー局も積極的に市民に『放送していますよ』と知らせ、人を魅きつけていかなければならない。むずかしいことだと思う。しかし『趣味の放送』でない以上、そのむずかしさと闘っていかないと、負けてしまう。市民に『どんな番組が聴きたいか?』をアンケート調査してみてはどうだろうか。認知度アップと、ニーズ把握に役立つだろう」

 ご意見ありがとうございました。
 本連載でも、読者の皆さんの「地元ラジオでこんな番組が聴きたい」を募集します。また、いちかわエフエムファンの「いちエフのこんな番組が好き」も同時募集。たくさんの「おたより」をお待ちしています。     (つづく)    



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 「7月6日に自転車で、初めて古い行徳橋を渡りましてね、欠真間を目指して、旧江戸川沿いをまっすぐに走り、走り、走り…、市川は広いですねぇ…、風が強くて、暑い日でしたよ。やっとたどりついた(取材先の)南行徳小学校はグラウンドも広いし、体育館も立派!」(いちかわエフエム『ドキドキリポート市川市民ミュージカル』7月10日放送)。

 8月31日に市川市文化会館で公演予定の、創作ミュージカルに参加する市民の動きを現場まで「追っかけて」、東奔西走する小林リポーター。
 4月から毎週水曜日(午後3時−4時)に放送されているこの番組は、ゲストが登場したり、ケイコ場の様子が録音で流れたり…。華やかな雰囲気を漂わせながら、間近に迫った公演をバックアップしている。長期間にわたって市民の活動を密着取材。コミュニティー放送ならではの番組だ。
 

−◇−  −◇−

 最近、コミュニティー放送に限らず、一般の人が社会に向けて「自分の思っていること・考えていること」を発表する機会が多くなっている。未来を担う子供たちにも「自分の考えを人に分かりやすく伝える」教育が進んでいるようで…。
 NHK教育テレビの子供向け番組で、小学生が「ビデオレター」を作っている様子を見た。
 子供たちは「かつおぶし工場」を見学し、その風景をビデオカメラに収め、自分たちの手で編集している。最初に出来上がったビデオは、魚の骨抜き作業のアップだけが延々と続いた。子供たちには、この場面が一番面白かったのだろう。でも…。

 「う〜ん、これじゃ、何のことだか、よく分からないね」と先生。 先生は、「まず<1>何を、どんなふうに報告するのかをよく考えた上で、<2>工場の全景を見せ<3>作業工程に添って、働く人々の手元のアップを入れ<4>再び全景に戻ってごらん」とアドバイス。
 さらに、「これからビデオカメラを撮るときは、ズーム機能だけに頼らないで、自ら被写体に一歩、二歩と近づいていくことも大事だよ」。
 子供たちが苦労の末に再編集したビデオは、見違えるほど分かりやすく、面白いものになっていた。「人にものを伝える」ときの「基本中の基本」を改めて教えられたような気がした。

 県域放送もコミュニティー放送も、「人にものを伝える」仕事をしていることに何の違いもない。だから、狭い市川も描き方次第で広くなるし、奥行きも出てくる。   






 「話題騒然!」「必見!」「これが、いま大ブレーク中の〜」「大ヒット中!」…。テレビ・ラジオ・雑誌などの宣伝文句に乗せられ、後で「アッ、シマッタ!」と思ったことはないだろうか? 記者は、これらの宣伝を、「話題騒然になるといいな」「必見してくださいよー」「これを、いま、大ブレークさせたい〜」「大ヒットに総力を挙げて取り組んでいます」の意味だと解釈している。
 宣伝しなくても、それが本当に良いものであれば、「口コミ」でじわじわひろがっていく。何かと急がしい世の中だからこそ、ゆっくり時間をかけて成長していく様を見守ることも大切だ。コミュニティー放送の取材をとおして、ふと、そんなことを思った。

 

−◇−  −◇−

2年ほど前、いちかわエフエムを訪ねたとき、社長と専務から、連載は『どんな内容になるの?』『視点はどこ?』と取材の趣旨を聞かれた。
「コミュニティー放送の周知度アップ」「番組の宣伝」「その他」と答えた。
その後のリポートを振り返ると、コミュニティー放送の良いところを、上手く皆さんにお伝えすることができなかったと反省している。なぜだろうか?

 最初の1年は頻繁にスタジオを訪ね、ボランティアパーソナリティーや局員といろいろな話をした。「身内」感覚で放送を聴いていると、パーソナリティーの顔が次々に浮かんで来て、
 「おっ、きょうも頑張っているな」
 「夜更けまでお疲れさま!」
 みんな仕事や勉学・家事のあい間をぬってスタジオにかけつけ、一生懸命しゃべっている。とちり、つかえ、沈黙、お知らせの誤読も、「ご愛敬」と受け取れた。
 少数精鋭の局スタッフは、夜勤もあるハードスケジュール。専務を囲んで夜遅くまで会議を重ねる光景も垣間見た。「ラジオへの愛」「こだわり」なくしては続かない仕事だ。
 内情を知り、「身内」に徹すれば、それなりに面白く感じられる放送だった。

 商業放送に見られる「売らんかな」主義はなく、「おっとり」したしゃべりが多く、電波の谷間の「秘境」のようなカンジ。このまま「知る人ぞ知る放送」として、熱心なコミュニティー放送ファンの耳を楽しませていくのも、ひとつの道かもしれない…。
 2年目からはふつうの「リスナー」になった。面白ければ聴き、面白くなければダイヤルを替える。そして1年目よりも聴く時間が減った。(つづく)   






 7月20日号で「いちかわエフエムでこんな番組が聴きたい」を募集したところ、同局で約1年あまりパーソナリティーをつとめていた「夏目みかん」嬢から便りが届いた。1年半前の、彼女の突然の降板劇には、本連載にも読者からの問い合わせが寄せられていたが、局側からもハッキリした回答が得られないまま、真相は「薮の中」だった…。

 「お久しぶりです。夏目みかんです。まず私の番組を毎週楽しみに聴いてくださっていたみなさんに、ゴメンナサイ。ちゃんとごあいさつをして、番組を終了できなかったことは、いまも悔いに残っています。もっと、みんなとおしゃべりがしたかった」
 で始まる手紙には、番組が突然終了してしまった原因を、「局と私とでは『ラジオへのこだわり』が違っていた」と具体的に説明。
 「私は、コミュニティー放送をとおして、地域リスナーの声を十分に聞いてあげたいと思っていた。でも、局は放送の『送り手』という意識が強かった」
 番組に毎回、放送中に読み切れないほど寄せられた「おたより」を片手に、
 「機材操作を間違えることもあったし、アナウンサー風のしゃべりもできなかったけれど、私はみなさんから寄せられるおたよりの『聞き手』であったような気がします」

 リスナーとの思い出もたくさんある。「最初にマイクに向かったのは深夜3時−4時の番組。『誰か聴いてくれているだろうか?』と不安でしたが、熱心なリスナーが『声が小さい』『頭出しが悪い』など、辛口アドバイスを送ってくれた。自分の放送がラジオからどんなふうに聴こえているのかがよく分かった。そして、夜11時台の番組に移動したとき、『昇進、オメデトウ!』のお祝いメッセージをいただいた」。

 リスナーと二人三脚のような放送では「熱心なファンのほかに、小学生の男の子から届いたファクスが記憶に残っています。彼は、市内で常勝のバスケットボールチームのキャプテン。自信満々で臨んだ県大会で初めての大敗。くやしかった。『井の中の蛙』だった−と。そんな素直な、『ねえ、聞いてよ』に出会えるのも、コミュニティーならでは、だなぁーと思った」。

 このように自分の思いを「聞いてほしい」リスナーは多い。そして「コミュニティー放送には、県域局では吸収しきれない人々の思いが集まってくる。それらをどう扱っていくか…。パーソナリティーの『発信願望』以上に、リスナーの『聞いてほしい』は強いと思います」。(つづく)



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