市川よみうり連載企画

                                       TD COLSPAN=3>    TD COLSPAN=3>    TD COLSPAN=3>    TD COLSPAN=3>    TD COLSPAN=3>   
検証・まち
<新交通機関>
1
地域密着型のミニバス<1>

コミュニティバスとは?
 「最近、各自治体で盛んに導入されているバスシステムで、主な公共公益施設等を循環し、交通不便地区や移動制約者(高齢者、乳児童連れの方等)の日常行動を支援するために小回りの効く小型バス等を用いて、きめ細やかなサービスを行う地域密着型の有料バスのことです」(平成17年3月市川市配布パンフレット『コミュニティバス導入検討』から抜粋)
 市川市が、市民の声を聴きながら検討を重ね、市内で相対的に必要度が高いと評価された2地域(北東部・南部)でコミュニティバス(コミバス)の社会実験運行を開始したのは平成17年10月。同18年7月には、運行ルート・便数の見直しが行われ、これまでに累計約44万人がこのバスシステムを利用している。
「浦安市川市民病院」から「現代産業科学館・メディアパーク」行きのコミバスに乗り込む人たち
 昨年11月―12月に行われたアンケート調査(同バス利用者とルート沿道内外市民合わせて約2800通・回収率34.1%)の集計結果では、全体的に、
○「公共交通がない、または不便な地区において市民の足を確保するのに必要である」=79.3%、○「運賃収入の赤字への税金投入について」は、「税金を投入してもよい」=46%、「利用者の料金で賄うべき」=33%という回答が出された。
 こうした結果などを踏まえ、市のコミュニティバスは、「市民の日常生活の足を確保するため、非常に大切な役割を果たす施策」と位置付けられ、「市民の理解を得られる範囲での税金投入」をしながら、平成19年度も社会的実験運行を継続することとなった。
 これから、同システムに関するさまざまな資料や利用者の声を参考に、車窓の人となり、「コミニュティバス」を検証してみよう。
 市川と浦安のちょうど境目あたり、「浦安市川市民病院」(浦安市当代島3丁目)の脇に、市川市コミュニティバス(南部ルート)の停留所がある。ここから「妙典駅」行きと「現代産業科学館・メディアパーク」(鬼高1丁目)行きが出ている。
 停留所の看板には、100円玉の絵と共に「ワンコインバス」の文字。同ルートでは「一乗車につき、小学生以上は100円。未就学児は無料」。回数券やバス共通カードは使えない。4月26日、同停留所12時8分発の便に乗ってみた。        (つづく)
<2007年5月4日>

検証 まちトップへ
検証・まち  
<新交通機関>
地域密着型のミニバス<2>

連休前の4月26日、「浦安市川市民病院」(浦安市当代島3丁目)脇にある停留所から、市川市南部ルートのコミュニティバス(午後零時8分発「現代産業科学館・メディアパーク」行き)に乗ってみた。
 バスの車体の前後左右には、「市川市コミュニティバス社会実験運行実施中」の文字がある。前扉から乗車し、運賃前払い(1乗車につき小学生以上は100円、大人1人につき未就学児2人まで無料)で、降車は中扉から。
 後部席に座り、車内を見渡すと…。
市川市南部を走るコミバスの事業主体は市川市。運行主体(維持管理)は京成トランジットバス

 乗客は、ベビーカーで眠る乳児も含め、全部で7人。壁面には、にぎやかな「企業公告」のかわりに、「市からのお知らせ」。荷物置きの台には、昨年11〜12月に行われたコミュニティバスに関するアンケート調査の「結果報告!」パンフレットや最新の運行ルート・時刻表がセットされている。
 バスは時速13〜14キロの安全運転で、街中を進んでいく。「新井1丁目」→「当代島水門」を過ぎたあたりから、進行方向左手に旧江戸川の堤防が見えてくる。
 「島尻」で、1人乗車。
 「新井排水機場」→「広尾(広尾防災公園予定地)」→「広尾・相之川」で、川沿いの道から大きな通りに出る。そのまま道なりにまっすぐ進めば地下鉄東西線・南行徳駅だが…。コミュニティバスは大きく逆「コの字」型に回り始める。
 「南行徳公民館」  1人乗車。
 「南行徳公園」   2人乗車。
 乗客は合計11人になった。大きな通りに戻り、
 「南行徳駅」    1人下車。
 東西線の高架をくぐり、500メートルくらい進んで左折し、
 「まんせい公園」  1人乗車。
 「福栄中学校入口」 2人下車。
 「福栄」      1人下車。
 「行徳駅前公園」では、
「(このバスは)行徳支所に行きますか?」と運転士に何度も確かめた婦人が、1人乗車。
 駅前通りに出て、「行徳駅」で2人下車、3人乗車。
 スタートからここまで、20の停留所があり、約30分が経過している。乗客は、小刻みな乗り降りで、10人前後をキープ。曜日や時間帯で差があるだろうが、平日昼の乗車年齢層は、中高年と乳幼児連れの母親が多い。車内の雰囲気は、「あせらず、のんびり」といった感じだ。   (つづく)
<2007年5月18日>

検証 まちトップへ
検証・まち  
<新交通機関>
3
地域密着型のミニバス<3>
平成19年度も「社会実験運行」を継続することになった市川市のコミュニティバス。実験運行中は、効果を確かめるべく、さまざまなデータが集められている。実験初年度の調査資料をみると…。
 南部ルートの一便あたりの平均利用者数(平成17年10月―同18年3月調査)は、平日=10.4人、休日=11.4人、雨天日=12.5人で、
 「休日・雨天日の利用者が多い」傾向にある。
 「乗降するバス停の概況」(同17年11月6日・10日調査)からは、「妙典駅」「行徳駅」「南行徳駅・南行徳市民センター入口」「浦安市川市民病院」「南行徳公民館」「行徳支所・行徳公民館」「現代産業科学館・メディアパーク」の乗降数が群を抜いていることが分かる。
メディアパークで乗客を待つ北東部ルートのコミバス。車体は、南部ルートよりひとまわり小型

 利用目的は、「平日は『買い物』が多く、次いで『通院』『通勤』『公共施設利用』の順。休日は、『買い物』が抜きん出て多く、次いで『公共施設利用』が多い」。
 平成19年4月26日、晴天。午後12時8分発「浦安市川市民病院」から「現代産業科学館・メディアパーク」行きのコミバス(南部ルート)に乗ってみると、乗客は全行程だいたい10人前後。客層は、「乗り慣れている」といった感じの地元中高年・乳幼児連れの母親が目立つ。ゆったり座席を確保して、ママさん同士の会話も弾んでいる。
   市内の路線バス網が主要駅を中心として放射線状に構成されているのに対し、コミバスの運行ルートは商業・公共公益施設や公園・住宅地などをこまめにつないでいる。そのため、遠回りとなるのが特徴だ。
 「伸延ルート」と呼ばれている「妙典駅」から「現代産業科学館・メディアパーク」までの道順もおもしろい。バスは妙典駅周辺をていねいにまわったあと、行徳バイパスに出る。そのまま新行徳橋を渡ると、すぐに右折して、田尻2丁目・3丁目を通り、京葉道路をまたぐ陸橋を通って一路終点へと向う。
 スタートから終点到着まで約1時間。路線バスとはひと味違った車窓の景色だった。
 「長旅」を終え、南部ルートのコミバスはメディアパークのロータリーでひと休みする。便数は少ないが、ここから、北東部ルート(動植物園行き)への乗り継ぎも可能だ。
<2007年5月25日>
検証 まちトップへ
検証・まち  
<新交通機関>
4
税金投入に市民の理解…<1>
「この提言書が、コミュニティバス及び公共交通施策に反映され、安全・快適に移動できるまちづくりに役立つことを願います」
 さる5月9日、市川市コミュニティバス評価委員会(歌代素克委員長)は、『市川市コミュニティバスに係る提言書』を千葉光行・市川市長に手渡した。
 「コミュニティバスの施策評価とともに、本格導入・維持する場合の枠組みや、導入を取りやめる場合の条件などを検討する」ことを目的として、平成18年に立ち上げられた同委員会。メンバーはコミバス沿線内外の自治会連合会や商店会連合会・商工会議所推薦の10人。今回の『提言書』には、昨年10月から今年3月の間に開かれた会議の内容がまとめられている。
市長に「提言書」を手渡す「コミュニティバス評価委員会」のメンバー=5月9日、市川市長室

 市のコミバスに対して、同委員会は、どのような評価・提言を行っているのだろうか? 「市川市におけるコミュニティバスの位置づけ」の項目では…。
 「公共交通がない、または不便な地区」に対してバスサービスを提供するがゆえに、多くの利用者が見込めず、事業採算性が確保できず、全国の先進事例をみても税金を投入するケースがほとんど。市川市でも、特定の地区(一部の市民)を対象として、税金を投入したバス運行は、市民相互の公平性を保てるのか?
 運行を肯定的にとらえれば、
 「地元の人たちがコミバスで公民館等を利用できれば、高齢社会を迎えたいま、財政は厳しいが地域の人のためになるという機運が生まれる」
 「全体的なことを考えて、いままで外に出られなかった人が(コミバスを使って)外出できるようになったらいい」
 「どうしても利用したいという人がいるので、その意見をなるべく取り入れるようにするべき」
 「市民相互の公平性という観点ではなく、公共交通がない、または不便な地域を対象として日常生活の足を確保すべき時代になってきた。税金で負担してもいいよ―というムードに持っていきたい」
 さて、そこで問題になるのは、「財政の厳しさ」の中、どこまで「税金で負担してもいいよ」と言えるのか? 「市民の理解を得られる範囲で」といわれても、現在市が補填している運行費(年間約6千万円・財政補填率約60%)がはたして「理解を得られる範囲」内かどうか…。       (つづく)     
<2007年6月1日>
検証 まちトップへ
検証・まち  
<新交通機関>
5
税金投入に市民の理解…<2>
5月末日現在、市川市コミュニティバスの車内には、次のような「市からのお知らせ」が掲示されていた。
 『コミュニティバスは運賃収入で賄えない運行経費(赤字額)を市川市が補填しています。平成18年度に補填した額は北東部、南部あわせて約5400万円となりました。本年度は、利用の増進と赤字額の縮減に向けた取り組みを進めてまいりますので、皆様にも更なるご利用をお願いします』
コミュニティバス運営の「提言」について千葉市長と評価委員が懇談=5月9日、市川市長室

 同「お知らせ」に添えられた「平成18年度の運行実績データ」をみると、
《運行経費》北東部ルート 約2800万円、南部ルート 約6300万円
《運賃収入》北東部 約1150万円、南部 約2500万円
《赤字額》北東部 ▲約1650万円、南部 ▲約3800万円
《採算性(収入/経費)》北東部 41.2%、南部 39.8%
《年間乗車人数》北東部 9万581人、南部 25万932人
《平均乗車人数(1日あたり)》北東部 248人、南部 687人
《同(1便あたり)》北東部 9.4人、南部 14.2人
 「市川市コミュニティバス評価委員会」は、さきごろ市長に提出した「提言書」の中で、同バスの位置づけを、
 「市民の日常生活の足を確保するために、非常に大切な役割を果たす施策」としている。
 「赤字補填」(財政補填率約60%)については、平成18年11月―12月に実施された市民アンケート調査結果を踏まえ、
 「赤字をそのまま背負うのはよくない」「赤字をなるべく少なくすることを考えるしかない」「前向きに経費を少なくすることを考えるべきである」「どのくらいの赤字が限度になるのか知る必要がある」「利用者料金収入とのバランスを考えると、市の補填は少なくとも五割以下にしてほしい」「今後、実験を継続しながら財政補填の目標を持つようにしていけばいい」など論議を重ねた結果、
 「コミュニティバス運行による効果や、継続に向けて適切な採算性の試算を行い、財政補填率の目標を持つこと」を提案している。
<2007年6月8日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
6
ルートは便利だが…<1>
市川市鬼高1丁目にある「千葉県立現代産業科学館」のホームページには、同館へのアクセス経路のひとつとして、市のコミュニティバスが紹介されている。
 「市川市南部(浦安市川市民病院・南行徳駅・行徳駅・妙典周辺)、同北東部(動植物園・保健医療センター・市川大野駅・大柏出張所・大野中央病院・東部公民館周辺)からのアクセスが容易になりました」
 バスの停留所(バス停名「現代産業科学館・メディアパーク」)は、
現代産業科学館駐車場にあるバス停留所。写真奥の同館内ロビーでバスの時間待ちをする人も多い

 「当館に隣接した駐車場にあります」
 5月末、市コミュニティバスの北東部ルートに乗るため、現代産業科学館に隣接した駐車場を訪ねた。
 北東部ルートバス停の前で、シニア夫婦が時刻表をのぞき込み、
 「うん、この、(午後)1時37分発の便に間に合うね」
と話し合っている。
―よくコミュニティバスを利用するのですか?
 「1週間に2回くらい」
―いつごろから?
 「今年4月からです」
―利用のキッカケは?
 「夫(70代)が、今年3月でマイカー運転を止めたんです。それで、このバスが自宅(南大野)の近くを走っているのを見かけて二人で乗るようになりました」
―利用効果は?
 「この周りの商業施設や図書館などを利用しながら…、健康のため、『お散歩』的な感じですね」 ―約2か月、コミバスを利用した感想は?
 「自宅最寄のバス停から乗り継ぎなしでストレートにここまで来られるのはいいけれど、便数が少ない、時間がかかるのがたまにキズだね。いつも、乗客は、だいたい5〜6人といったところかな」
 ちなみに、時刻表をみると、同停留所発は1日5便、二人が降りる「大野小学校」まで所要時間は約40分。
 「時間に余裕のあるお年寄りにはいいけれど…。急いでいる人にとっては大変でしょうね」
―料金的には?  「現在の(1乗車につき)150円には、満足しています」
 「『高齢者は無料』、にしたっていいんだよ」
―コミバスの運行自体については?
 「いいことだと思う」「なくなると、困るね」   (つづく)      
<2007年6月15日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
7
ルートは便利だが…<2>
市川市の北東部を走るコミュニティバスには、「リハビリパーク(柏井町4丁目)を基点とした循環ルート(右回り・左回り)」と、「動植物園(大町284)と現代産業科学館・メディアパーク(鬼高1丁目)の往復ルート」がある。
 5月末、県立現代産業科学館駐車場に設けられた同バス停留所から、午後1時37分発「動植物園行き」に乗った。
 スタート時点で、乗客は10人。
 小型バスの座席はほぼ埋まっている。後部席に座る子供連れの女性(30代)と話をした。
北東部ルート「動植物園行き」のコミュニティバスに乗り込む乗客たち=5月31日

―どちらにお住まいですか?
 「最近、行徳から宮久保に引っ越してきました」
―コミュニティバスを、よく利用しますか?
 「行徳に住んでいたころは、娘(4歳)の通う幼稚園が、南部ルートの沿道にあったので、よく利用していました。時刻表も持っていました」
―北東部ルートは?
 「きょうの、この便が初めてです」
―北東部ルートは、行徳に住んでいたころから知っていた?
 「はい。でも、『現代産業科学館・メディアパーク』という停留所が、どこにあるのか、よく分からなくて…」
―きょう、やっと、停留所を発見した?
 「そうなんです。用事をすませて帰ろうとしたとき、たまたまコミバスがあの駐車場に入っていくのを見つけて、入り口の守衛さんに聞いて確かめて、『ああ、ここだったんだ』と」
―コミバスを使うと、便利?
 「ええ。来るときは、路線バスでJR本八幡駅に出て、そこで無料のコルトンシャトルバスに乗り換えました。コミバスだと、乗り換えなしで自宅近くまで。楽です。料金的にも、一乗車150円はお得です」
―もし、コミバスが料金を値上げしたら
 「う〜ん、路線バス料金より高くなったら、ちょっと…、考えてしまいますね」
―現在「社会実験運行中」のコミバスに、これから、何か、望むことは?
 「ゼイタクは言えませんけど、もっと本数を増やしてほしい。それと、私の場合は、実家が行徳なので、北東部ルートと南部ルートのアクセスがもっとスムーズになればいいな―と思います」          (つづく)
<2007年6月22日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
8
ルートは便利だが…<3>
市川市コミュニティバス北東部ルートのひとつ、「現代産業科学館・メディアパーク(鬼高1丁目)―動植物園(大町284)」間を往復してみた。乗車時間は、約2時間。
 市発行の運行ルート地図では、大きくなだらかに迂回しながら目的地に向かうようにみえたが、実際は…。
 こまめに、出たり、入ったり、上ったり、下ったり。南部ルートの直線的迂回と比較すると、北東部ルートの迂回は曲線的でアップダウンもあり複雑だ。もっとも、コミュニティバスにとっては、そんな「迂回路」こそが「メーンルート」。
コミバスの『大柏出張所』バス停。周りは遊水地を取り囲むようにつくられた「こざと北・南公園」

 運行の様子を断片的に紹介しよう。
 「宮久保3丁目」バス停。
 母親と一緒に降車する園児が、バスに向かって手を振りながら、「さようならー」。運転士も乗客も思わず顔をほころばせ、手を振り返す。
 「大野中央病院内」バス停。
 バスが同病院の正面玄関付近に横付けされる様子を見た中年男性二人は、
 「ほおっ、ここまでバスが寄せられるんだ!」
 『小型のバスだから、こんなことができるんだよな』
 「大柏出張所」バス停。
 停留所の位置は、「こざと北公園」と「こざと南公園」の間の道に設置されている。肝心の大柏出張所は、道路を隔てた反対側だ。まわりの景色を見る限りでは、ここは『こざと公園』の方が適切だろう。バス停のネーミングのズレ加減が、ちょっと気になる。
 「市川大野駅」バス停から荷物を持って乗り込んだ中年女性の二人連れは、
 「ねっ、おもしろいでしょ」
 感想を求められたほうは、今日がコミバスデビューのようだ。くねくねまわりながら進むコミバスの経路を、車窓から興味深深、確かめている。はたして、リピーターとなるや、否や。
 「動植物園」バス停。
 乗降客は、平日の午後ということもあり、ゼロ。同施設のロータリーは、閑散としていた。車内公告(市川動植物園)のシロフクロウが、「また来てね」といわんばかりに笑っていた。
<2007年7月6日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
9
利用者増への方策<1>
平成17年10月に社会実験運行を始めた市川市のコミュニティバス。その後、「もっと便利に もっと身近な市民の足へ!」を目指し、交通不便地域住民の要望を確認しながら、ルート延伸・変更、バス停の増設などが図られているようだ。
 さる6月27日に閉会した市川市議会六月定例会の一般質問では、二人の議員から、大町方面へのコミバスルート延伸の要望があがっていた。
 過去の議事録にも、同バス関連の質疑応答が残っている。たとえば、昨年の6月定例会では、
「船橋法典駅入口」停留所(写真奥を左折)から駅までは徒歩で約3〜4分といったところだ

 「北東部地域のコミュニティバスのルート、時間帯、バス停は不便であり利用者が少ない。そこで、市長あてにJR船橋法典駅への乗り入れ等を願い、1260人署名の要望書を提出した。利用者の増を図るため、ルートや運行時間帯の変更はできないか」(加藤武央議員)
 「東側区域については、利用割合が低いこと等の経緯を踏まえた上で、法典駅への乗り入れ等の変更を予定している。また、柏井地区から第5中学校への通学、鉄道利用者の利便性等を考慮し、始発を午前7時台、終発を午後6時台と運行時間帯の延長も予定している」(道路交通部長)
 このような地元の要望に応え、JR武蔵野線・船橋法典駅を経由する北東部ルートがリニューアルスタートしたのは、平成18年7月。
 梅雨の晴れ間、JR武蔵野線・船橋法典駅で下車し、駅前ロータリーで市川市コミュニティバス「船橋法典駅入口」停留所を探した。
 京成バス「中沢道経由 桐畑」行き「船橋法典」停留所はロータリー内ですぐに見つかったが、コミバスの停留所はどこだろう?
 同駅出口から右方向に2〜3分歩き、右折して約100メートルほどの工場脇に、あった! 「駅入口」というよりも、「駅近」といった感じの、控えめな配置だ。
 作業中の工場主に尋ねてみた。
―このバス停から、たくさん人が乗りますか?
 「そうだねぇ、だいたい、時間になると、人が集まってくるよ」
 ここから、北東部左回りルートに乗ろうと、バスを待った。確かに、時刻表にあわせて、ひとり、ふたりと、バス停の周りがにぎやかになってくる。      (つづく)
<2007年7月13日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
10
利用者増への方策<2>
市川市コミュニティバスの運行ルートは、最初に、どのような「視点」で描かれたのだろうか? 『市川市コミュニティバスに係る提言書』(5月9日、市コミュニティバス評価委員会が市長に提出)によれば…。
 まず、
@民間のバス事業は事業採算性を確保することが前提であり、多くの需要を見込める通勤目的に主に対応するように、駅を中心として放射線上にバス路線を設定している。このため、公共公益施設や病院などに対しては、バス路線がない、または乗り継ぎをしないとならない状況になっている。
 だから、
Aコミュニティバスは、市民の生活の足を確保すること目的とし、公共公益施設や病院などにアクセスできることを目標とした。北東部では病院を経由する環状部分を持ったルート、南部では市街地相互や病院などを結ぶルートとし、両ルートを乗り継げるように設定した。
 ただし、
B路線バスに比較して料金が割安になっているコミュニティバスは、民間バス事業を圧迫しないように、ルートを競合させないこと(駅に乗り入れないこと )が一般的に求められている。
利用者から「もっと駅近に設置してほしい」との声が聞かれるコミバス「船橋法典駅入口」停留所

 市川市コミュニティバス「船橋法典駅入口」停留所は、平成18年7月、地元の要望に応じて誕生した、その後、北東部ルートの乗車率は、前年度の約2.5倍にはね上がった。さらなる利用促進を図るために、運行時刻表を拡大コピーして町内に配るなどしている沿線自治会もある。
 梅雨の晴れ間、同停留所で、バスを待つ人たち(4人)と話をした。
 ここを経由するコミバスは一日19便(右回り9便・左回り10便)で、本数に「もの足りなさ」はあるものの、「便利だ」「助かる」「毎日使っている」「このバスを頼りにしている」「なくなったら困る」。医療施設へのアクセスについても「病院の玄関先までバスが行ってくれるので、満足」
 しかし、JR武蔵野線船橋法典駅から徒歩約3分という停留所の位置については、
 「もっと駅の近くに止めてほしい」「お年寄りや足の不自由な人もいるのだから、駅前に止めてほしい」。そのことを、「ぜひ、市に伝えてください。お願いしますよ―」。        (つづく)
<2007年7月20日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
11
利用者増への方策<3>
「コミュニティバス等地域住民協働型輸送サービス検討小委員会報告書」(平成18年1月・国土交通省自動車交通局旅客課)の資料によれば、コミュニティバスは、全国2418の市区町村(平成17年4月1日現在)中、914市区町村で運行されており、導入数の多い「上位20都道府県」のトップに千葉県が挙がっている。
 同報告書から『平成17年に、国交省が全国10か所の地方運輸局等を通じて行った調査』結果の一部を紹介しよう。
 「コミュニティバスの運行(導入)目的」は、@既存路線バスの廃止代替(31%)A交通空白地帯の解消(27%)B市街地活性化(19%)Cその他(18%)。
 Cの「その他」の内容は、「買い物・通院支援対策」「交通利便の向上策」「公共施設間移動の対策」「通学輸送の支援」「観光振興支援」など。
 「運賃形態」は、@100円均一(33%)A200円均一(14%)B150円均一(2%)Cその他(51%)。
 コミバス導入後、「うまくいっている」事例もあるが、「うまくいかなかった事例も多々あるのが実情」だ。
 同報告書は、「うまくいかなかった」事例の原因として指摘された事項と、それを踏まえたこれからの検討課題を次のようにまとめている。
 「うまくいかなかった事例の主な原因」は、
・運行目的があいまい、またはほとんど議論されていなかった。
・成功事例のコピーに終始し、その地域の実情を十分反映した運送形態・路線設定・運行頻度・運賃・車両等になっていない。
・住民や商工会議所等の地元関係者の参画が計画段階から十分になされていなかったため、住民の関心も一過性のもので終わってしまう(愛着の不足)。
・既存のバス路線との整合性が考慮されておらず、結局、既存路線の利用者を転換させただけになってしまった。
・運転開始後のフォローアップ態勢が整っていなかった。
 では、「うまくいく」ためにはどうすればいいのか? 
・地元住民からの要請、理解、長期運行計画の資金計画、地域に根付くための運行計画等、かなり明確なビジョンを地方公共団体自らが有する必要がある。
・利用者拡大のため、地方公共団体自らがPRする。
・コミバスが走行する道は、住宅街等狭隘道路が多く、対向車との離合施設等道路整備・改善が必要。
・バス停用地確保が難しく(住民理解が必要)、車いす用スロープ板が使えない所も多いため、地方公共団体が主体となり、地元警察への働きかけ等、走行環境の改善に取り組む必要がある。
・複数市町村が運行協議会形式で運行する場合に、相互の連携や意思統一を図る。 (つづく)
<2007年7月27日>       
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
12
利用者増への方策<4>
ここで、市川市のコミュニティバス(南部・北東部ルート)を利用した感想を、いくつか挙げてみよう。
 @「知る人ぞ知る」バス
 コミバスの乗客にインタビューすると、「定期的に利用している」との声が多い。「目的地到達までに時間がかかる」「もっと本数を増やしてほしい」など要望と同時に、「便利だ」「なくなったら困る」と愛着度も高い。
 一方、沿線外の人・マイカー利用者にコミバスについて尋ねると、「まったく知らない」「どこを走っているのか?」と、つれない返事。この、差が、大きい。
 Aときどき、停留所が「かくれんぼ」
   公共施設、特に病院の玄関先に設置されたバス停は、利用者に大好評だ。いわゆる「交通不便地域」に住み、いままでタクシー通院していたという人からは、「バスの時間に合わせ、何とか自力で通院できるようになった」「交通費が節約できる」と、喜びの声。
「保健医療福祉センター」玄関先には京成路線バス(左)とコミバス(右)の停留所が並んでいる

 一方、「エッ、何でここに?」といった停留所もある。たとえば、東西線南行徳駅や、JR武蔵野線船橋法典駅「近辺」のバス停。まるで「かくれんぼ」しているようで、慣れないうちは、バス停探しをしてしまう。ルートの都合上や、駅前用地確保困難のため、けっきょく「近辺」になってしまったのかもしれないが…。
 「玄関先」停留所がとても便利なだけに、「近辺」停留所の不便さが目立ってしまう。バス停の位置は、「分りやすい」ほうがいい。
 B「どこまで行きますか?」
 客を乗せる前に、「どこまで行きますか?」と必ず問いかける運転士がいた。発車まで時間調整の間、乗客と打ち解けた話をしていた。
 「ときどき、行き先を間違えて乗る人がいるので、私のほうから聞くようしているんです」
 『私も、一度、間違えたことがあるのよ』と、笑う高齢女性。
 「コミバスの運転士は、みんな優しいですからね。『○○に行きますか?』と、聞いてから乗るといいですよ。今日はどちらまで?」
 『○○まで』
 「ハイ、ちゃんと行きますよ」
 『私、足が悪いの。よく転ぶんですョ』
 「走行中、席を移動するときは、気をつけてね」
 そんな、運転士のさりげない気遣いに、コミニュティバスらしさを感じた。(つづく)
<2007年8月3日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
13
利用者増への方策<5>
いま、コミュニティバスは、全国の900を超える市区町村で導入されている。なぜ、このような、コミバスブームが起きているのだろうか。
 国交省の「コミュニティバス等地域住民協働型輸送サービス検討小委員会」報告書は、時代と共に変わるバス事業の姿を、次のようにまとめている。
 まず、これまでの、我が国における乗合バス事業は、
 「稠密な都市構造のもとで、輸送サービス事業のメリットを生かした副業を展開すること等により、戦後の復興、それに続く高度経済成長期においては、大量輸送公共機関として画一的なビジネスモデルを採用しても、ある程度の利益をあげることができた。また、受給調整規制を前提としてバス事業者の内部補助によって、各地域の公共交通網を維持することが可能であった」
浦安市では東京ベイシティ交通がてんとう虫の絵で親しまれている「おさんぽバス」を運行

 しかし、いまは、
 「受給調整規制が廃止され、それに伴い地域公共交通政策への地方公共団体の関与が強まったことや、モータリゼーションの進展による地域構造・ライフスタイルの変化等によって、地域ごとに多様な輸送ニーズに対応することが求められる時代となってきている」
 さらに、
 「少子高齢化・人口減少社会を迎える今日、これまでの画一的なサービス提供のありかたでは、ビジネスモデルとして通用しなくなってきている」
 だから、これからは、
 「地域の多様な輸送ニーズにいかにきめ細かく対応していくかが、バスをはじめとする乗合旅客運送サービスの生き残りの道であり、また、それが利用者にとってもニーズに即した移動手段を確保することになる」
 市川市コミュニティバスの北東部ルートを運行している京成バスは、
 千葉県内で、
○八千代市「ぐるっと号」(運賃・大人=100円、小学生未満=無料)、○千葉市「さらしなバス」(大人=200円、中学生以下=100円)
○流山市「ぐりーんバス」(大人150円、6歳以上12歳未満=80円)
 都内でも、
○荒川区「さくら」(大人=150円、小学生以下=80円)
と、それぞれの地域の「愛称」を持ったコミュニティバスを走らせている。
<2007年8月17日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
14
税金投入の是認46%
市川市コミュニティバスの「平成18年度運行実績データ」によれば、同年度の年間運行経費(ランニングコスト)は約9100万円。運賃収入は約3650万円で、赤字部分の約5450万円を市が補填している。財政補填率(赤字/年間運行経費)は59.9%で、同年7月時点予測(58.6%)とほぼ一致している。
 年間利用者数については、残念ながら予測(約39万人)を超えることができず、約34万人とやや伸び悩んだ。
 市川市のコミュニティバス運行について、
 「市民一人あたりの赤字負担はどのくらいか?」
 「1キロあたりの運行経費は?」
という質問が、読者から寄せられた。
 これまでに市が行ってきたコミュニティバスに関する「アンケート調査」資料や、「コミュニティバス評価委員会」議事録などから、答えに該当する個所を探してみよう。
 まず、「市民一人あたりの赤字負担」については、
 「(税金投入約6千万円の場合)、20歳以上の市民が一人あたり年間160円を負担していることになる。他の地区で運行する場合も、同じ程度の負担が必要になると考えられる」
 市が平成18年度に実施した市民アンケート調査(配布数2835通・回収数960通)
で、「税金を投入してもよい」と答えたのは、全体の45.9%。その中で、「投入してもいい」金額は「市全体の財政バランスの問題なので、市が判断すべきである」が31.7%でトップ。次いで、「200円程度」25%、「100円程度」17.1%、「300円程度」6.7%、「100円未満」5.6%、「500円以上」1.7%。加重平均は176円となり、現在の160円負担は、「税金投入」を肯定する人たちにとっての許容範囲内といったところだろう。ただし、「利用者の料金で賄うべきである」という意見が全体の32.9%あることも忘れてはならない。
 次に、「1キロあたりの運行経費」については、
 北東部ルート(14.7キロ)=209円、南部ルート(11.1キロ)=328円。
 なぜ、北東部より南部のほうが100円以上高いのか?
 南部ルートを走る車両は、中型ノンステップバス(運行主体=京成トランジットバス)。北東部ルートの車両は、同小型(運行主体=京成バス)。外形的にみて、車両の大きさに違いがある。
 さらに、
 「北東部では乗務員に嘱託社員を、南部では正社員を採用していることで、人件費に差がある」
 ちなみに、バス1台・1キロあたりの運行経費は、県内の民間平均が520円程度。この金額と比較するならば、市のコミュニティバスの運行経費は、かなり低めに抑えられている。            
<2007年8月24日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
15
地域が支えるバスに<1>
神奈川県大和市に住む40代女性からの便りを紹介しよう。
 「コミュニティバスは、うちの方でも走っています。通常のバスより小型で、座席間隔が狭いためか、初対面の乗客同士で会話が弾みます。どこで降りたらいいか隣の人に聞いただけで四方から答えが返ってきます。これがホントのコミュニティバスだと感じることもあります。まあ、土地柄もありますけどね」
 同市のコミニュティバスの愛称はのろっと=B
 「マイカー族にはうっとおしく感じられるかもしれませんが、私は、そんな地元の人たちのやりとりや昔話に耳を傾けながら、外の景色を眺めるのがすきです」
 のろっと≠ヘ、平成14年に実験運行を始め、同16年から本格運行がスタート。同市は現在、「地域ぐるみで運行するバス」を目指し、「時刻表への有料公告掲載」や「協賛企業の募集」を行っている。
 市川市のコミュニティバスは、現在実験運行継続中。同期間中に検証すべき内容としては、
○料金水準の見直し
○運行ルート・ダイヤの見直し
○利用促進策の展開
○市民協働への取り組み
などが挙げられている。
 検証は進んでいるか?
 先の市議会6月定例会で、「コミュニティバスの今後」を問う議員の質問に対し、道路交通部長は、
 「『運営に市民が入ることが望ましい』という、市民アンケート調査の結果や(コミュニティバス評価委員会の)提言をいただいているので、地域がコミュニティバスを支える制度の検討や、市民が運営に参加できる制度の検討を進めており、なるべく早く具体化していきたいと考えている」
 また、
 「市民との協働という視点からは、地元で協議組織を立ち上げていただき、ルート・ダイヤなどを研究していただくことも有意義であろう」
 そして、
 「実験結果を評価するための判断指標が必要となるので、この『指標』についても早期に詰めてまいりたい」
 8月25日付「広報いちかわ」に、こんな記事が掲載されていた。
 「コミュニティバスへの協賛者と広告を募集します」
 さっそく、市民協働の試みが始まったようだ。
   協賛金は、1口1000円。「寄付金」として税控除が受けられる。口数に応じて協賛者の名前をバス車体やホームページに掲載することもできる。
 「広告」については、現在北東部3台と南部4台運行のコミバス車体に、
 「お店の広告や地域のイベントのお知らせ、お子さんの描いたお気に入りの絵などの掲示物を有料で張りだすことができるようになりました」      (つづく)
<2007年8月31日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
16
地域が支えるバスに<2>
ミュニティバスを、「地域が支えるバス」にするためには、市民の協働が不可欠。では、市川市に「コミュニティバスの運行に協力できる」と答える市民はどれくらいか?
 市が、平成18年11月に、コミュニティバスの「利用者」「沿道市民」「沿道以外市民」(全配布数2935通)を対象に行ったアンケート調査(回収数960通・回収率34.1%)によれば、
 同バスの運行に「協力できる」と答えた人は、「利用者」=97.4%、「沿道」=66.5%、「沿道外」=64.1%。全体では74.7%という数字が出ている。
 「協力内容」については、「バスの積極的利用」が最も多く、全体の76.4%。次いで、「バスの普及(知人への紹介など)」=42%、「協賛金制度」=11.3%、「ボランティア活動(イベント企画・一日車掌など)」=7.7%。
 「協賛金制度」の許容金額は、「3千円未満」=69.1%、「5千円程度」=13.6%、「1万円程度」=2.5%。
 同アンケート調査の「自由記入欄」には、コミバス運行に対する455件の書き込みがある。「肯定」「否定」「要望」などを、回答者の約二人に一人が書き込みした計算になり、「新交通機関」への関心がうかがえる。その中で、コミバス利用頻度の少ない「沿道外」市民の意見に注目してみよう。まずは、「肯定」意見から。
 「『採算が取れない』として路線バスが走らない所は、コミバスが運行されるとありがたいです。自家用車が無くても外出ができるようになると、年配者や子供たちも安心。ルートを検討しながら実験運行を希望します」(60代女性・東菅野)
 「現在は利用していないが、これから高齢社会になり、町中への出歩きはバスが良いと考える。狭い道路での渋滞はいやだが、老人の足として大切」(60代男性・曽谷)  「家族を含め私自身、コミバスを利用する生活をしていません。しかし、交通の便の悪い地域の方々(特にお年寄り)のことを考えると、コミバスのような計画も必要だと思う。市川は、お年寄りの車・自転車の運転が多いように思う」(40代女性・北方)
 「行徳地区に住んでいる人(老人)は、市川浦安病院に行く足がとても不便です。たとえば入院などした場合、コミバスがあれば付き添いをする人も便利です」(20代女性・幸)
 「コミバスを有効活用するなら、目的を明確にして、その目的に合った対象と協力で運営することが望ましい。福祉目的なら福祉関連施設との協力、観光目的なら沿線で活性化が期待できる施設との協力など、明確な目的により需要があるところに設置する。費用負担や運賃の設定は、その目的次第である。弱者救済・街の活性化のためなら、市税投入を惜しむ必要はないと考える」(20代男性・市川)      (つづく)  
<2007年9月7日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
17
地域が支えるバスに<3>
市川市が、平成18年11月に、コミュニティバス「利用者」「沿道市民」「沿道以外市民」(全配布数2835通)を対象に行ったアンケート調査(回収数960通・回収率34.1%)の「自由記入欄」には、同バス運行に対する455件の書き込みがある。その内訳は…。
 「要望」268件、「肯定」143件、「否定」44件。
 書き込みの約1割に相当する「否定」意見を、ここでいくつか挙げてみよう。
 ○バスを利用できる市域が限られている。運行回数が少ない。
 「(自宅近くにコミバスの)停留所なし。利用したくても利用できません。何のためのコミュニティバスでしょう?」(70代女性・平田)
 「コミバスは市内でよく見かけます。家のそばに停留所があったので利用しようと思い、待ってみたが、待ちきれず、利用しなかった。といって、運行回数を増やせば費用がかさむ。止むを得ないかと思う」(70代男性・鬼高)
 「地域サービスとして発足しているが、ルートに近いかどうかで差がありすぎ、不公平。民間バスと協働して。路線を拡充するほうが先決ではないか」(60代男性・鬼高)
○運行赤字を税金で補填するのはいかがなものか。
 「本来的には受益者負担が原則であるべき。税金投入により運行業務維持は、公平という名の不公平である」(70代男性・妙兵典)
 「税金投入は考えるべきである。運賃値上げにする方法しかないのではないか?」(60代女性・八幡)
 「路線バスとコミバスの運賃を同じにしないと、利用しない人にとって同じ料金の税金を負担させられることを不公平に感じる」(20代女性・平田)
 「運行にかかる費用は、サービスを受ける人たちが多く負担すべきと思います。私には全く利用価値がないものですから」(40代男性・福栄)
 「コミバスの考え方には賛成です。ただし必要とする人が大勢いることが運営の前提であり、その運営の費用は利用者が負担するのが筋である。税金の投入がどこから出てきたのか、またどうして運賃を低くしているのか理解できない」(60代男性・幸)
 「交通の便の悪いところに住んでいる人や高齢化が進んでいるので、コミバスは良いと思うが、利用者にはそれなりの負担をしてもらわなければいけないと思う。何でも税金で賄うのは反対」(60代男性・鬼越)
○コミバスの利用者をあまり見かけない。インフォメーション不足?
 「現在、市内でコミバスの利用者をあまり見かけません。どのルートで走っているのか、はっきり分かっていない状況もあり、利用しにくくなっています」(50代女性・南大野)        (つづく)
<2007年9月14日>    
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
18
地域が支えるバスに<4>
「税金をバス利用者に使うのは格差なのか、でもバスを通さないほうが格差になるのか。両方の意見をまとめるのはむずかしいと思う」(30代女性・原木)
 「地域の細かいところまでバス停があると、利用者にはありがたいが、お金のことを考えると、税金を使われるのはあまり賛成できないし…。といって、料金を値上げしてどの程度赤字解消になるのか…利用者が減ってしまわないか…、難しいです」(30代女性・南大野)
 市川市が同市コミュニティバス「利用者」「沿道市民」「沿道以外市民」(平成18年11月実施・全配布数2835通)を対象に行ったアンケート調査結果(回収数960通・回収率34.1%)の「自由記入欄」から抜粋。
 同欄を読み進めていくと、「肯定」「否定」意見の他にも、コミバス運行に関する「要望」が268件寄せられている。なかには同アンケート調査で問われて、コミバスの存在や赤字運行を知ったという人も。
 「市川市に住んで1年以上、コミュニティバスの運行を知らなかった。転入時にバスの運行を教えてくれるような広報活動をしてもよいのではないかと思う」(20代女性・妙典)
 「このバスがあることは、最近知りました。市営霊園に行くときなどに利用したいと思いますが、バス停がよく分かりません。パンフレットを自治会等に配ってもらうなどしてはどうか。もっと分かりやすく広くバスのことを宣伝すべきです」(70代女性・大野)
 「私はいままで利用したことはないが、もっと(コミバスが)あることをアピールしてはいかがでしょうか。広報などで知らせてください。全く知らなかった」(40代女性・相之川)
 「今回郵送されたカタログで初めてコミュニティバスの時刻表を手に入れることができました。2年ほど市川市に住んでいますが、時刻表は全く目にすることがありませんでした。もう少し宣伝に力を入れればよいのではと思います」(30代女性・南行徳)
 「コミュニティバスがあるのは、今日知りました。(同バスを)みんなに知ってもらう必要がある。もっと利用者を増やすようになにか対策を考えよう」(40代男性・新浜)
 「あまりよく知られていない。もう少し路線等が分かるように知らせてもらえば利用すると思う」(70代男性・高石神)
 「コミバスが通過し、停留所が新たにできた地域は、定期的にバスが運行されることにより、住民の安心感が以前と比べて高まったような印象を受ける。運行赤字が出ていることについては、今回初めて知った。行政職員・市長も含めて積極的に利用して、車通勤を止めて、市民にアピールしたらどうか。そうすれば、市民の認知度も高まるだろう」(50代男性・大野町)          (つづく)      
<2007年9月21日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
19
地域が支えるバスに<5>
市川市のコミュニティバスは平成19年10月1日、社会実験運行3年目を迎える。市道路交通部交通計画課資料で、これまでの運行実績をたどってみると…。
○実験スタート当初(平成17年10月)
「月間乗客数」
 北東部ルート=約3700人
 南部ルート=約13000人
「一便あたり平均乗客人数」
 北東部=6.3人
 南部=10.7人
○平成19年7月
「月間乗客数」
 北東部=10250人
 南部=約29000人
「1便あたり平均乗客人数」
 北東部=11.4人
 南部=18人
 直近の「月間乗客数」は、両ルートとも、スタート当初の2倍以上(北東部=約2.8倍、南部=約2.2倍)になっている。「1便あたり平均乗車人数」でも北東部=約1.8倍・南部=約1.7倍と、これらの数字を見る限りでは、なかなかの健闘ぶりだ。
 「もう、『空バス』『空気を運んでいるバス』なんて呼ばせない」
 そんな、コミバス利用者の声が聞こえてきそうだ。
 市川市が平成18年度に行ったアンケート調査では、コミバス肯定意見として、「運転士に好感」のコメントがいくつか挙がっている。たとえば、
 「コミュニティバスの良いところは、運行当初からいる運転士の皆さんがとても親切で、安全運転だということです。乗っていても安心でき、降車時に子供が手を振るのですが、きちんと笑顔で振り返してくれます。路線バスでは、ないことです。運転士の方々、いつもありがとうございます」(20代女性・奉免)
 「路線バスの運転士さんより対応が丁寧なので、利用して気持ちが良いです。絶対になくならないで欲しい」(20代女性・広尾)
 「身障者で、バスを使いリハビリに通っています。運転士さんの確認コール、乗り降りの注意、ありがとうございます。路線バスにはない新鮮さを感じ、好感を持って利用しています」(70代男性・若宮)
 「骨折のため週3回、4か月間の通院に利用しました。自宅近くにバス停があり、大変助かりました。その上、運転士さんが乗り降りに気をつかってくださり、また運転が丁寧で安心して乗せていただきました。高齢になったら、こんなバスがいいですね」(50代女性・東菅野)
 なるほど、運転士のマナー・サービスの良さ、心遣い、安全運転がコミュニティバスのイメージアップにつながっている。
 きめこまやかな特化したサービスは、これからのコミバスのセールスポイントのひとつとなるかもしれない。 「試しに乗ってみた」「気持ち良かった」「安心できた」「また乗ってみたい」と思わせるコミバスなら、市民が支えたくなるだろう。  (この項終わり)
<2007年10月5日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
20
小まめに動くおさんぽバス<1>
市川市と浦安市の境で、車体にてんとう虫とお日様の模様を付けた小型バス(浦安市コミュニティバス「おさんぽバス」)を見かけて以来、隣の街のコミバスにも乗ってみたいと思っていた。
 キーステーションはどこだろう? 同バスの「時刻表・停留所MAP」を参照すると、JR京葉線・新浦安駅から「舞浜線」と「市民病院線」の2路線に乗ることができそうだ。
JR新浦安駅前のバスロータリーで「市民病院行」「舞浜駅行」の「おさんぽバス」を待つ人たち

    新浦安駅前の、広いバスロータリーに立つと、ひっきりなしに大型路線バスの発着が繰り返されている。コミバスの停留所はどこだろう? 
 ロータリーの一角に、緑地にオレンジ色の文字鮮やかな「おさんぽバスのりば」の看板がかかっていた。停留所の時刻表は、いたってシンプルだった。
 「舞浜線」「市民病院線」共、午前7時台は1時間に2本、午前8時台〜午後7時台は3本、午後8時台は2本と、20分間隔で運行されているのが分かる。
 ときどき小雨がぱらつく、平日午前10時台。停留所近くの花壇の端に腰掛け、しばしコミバス発着の様子を眺めた。
 両線が交互に発着しているので、10分間隔で乗降客の姿をみることができた。
 定刻前になると、どこからか人が集まり、3〜4人、4〜5人、5〜6人の、小さな列ができる。
 「けっこう、利用されてるみたいだよ」
と、駅前自転車整理の男性が教えてくれた。
 「新浦安駅」から、「順天堂浦安病院」―「市役所・Uセンター」―「健康センター」―「郷土博物館」―「中央図書館」―「中央公民館」―「浦安駅」などを経由して、「市民病院」に至る、おさんぽバス「市民病院線」(走行距離約6キロ・片道約30分)に乗ってみた。
 広くて低いステップの乗降口。それに続く車体床も低く、まったく段差のないフラット構造だ。これなら、老若男女を問わず安心して乗り降り移動ができるだろう。
 100円を前払いして、客席に着いた。車内には、窓を背にして16席が設けられている。席の手前には、降車押しボタンの付いた握り棒がある。
 定刻に、おさんぽバスは、3人の乗客を乗せて、静かに走り出した。  (つづく)
<2007年10月12日>
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
21
小まめに動くおさんぽバス<2>
浦安市のおさんぽバス「市民病院線」は、平成14年に(実証)運行を開始している。同年4月1日の「広報うらやす」は、同バスの特徴を、次のようにまとめている。
○高齢者や障害者、小さい子供連れのお母さんなどに優しい交通手段として、各地で運行が始まっているバス。
○狭い道でも走れる定員26人乗りの、環境に優しい天然ガスで走る小型バス。
○床が低くて乗り降りが楽で、車イスでも乗車でき、そのまま座席として固定できるバリアフリーのバス。
○バス停は約200メートル間隔。
○運賃はワンコイン(100円・未就学児は無料)。
○年中無休で朝7時30分から、夜の9時まで、20分間隔で運行。
○ルートは路線バスと重ならない道を選び、当代島の市民病院前から東西線浦安駅のそばを通って、元町の湊線から市役所経由で走行。京葉線新浦安駅までの往復で、片道約30分。
「おさんぽバス」の車体に描かれている「浦安のまちに合う斬新的な『太陽と、てんとう虫』」

   JR京葉線「新浦安駅」前から、運行6年目のおさんぽバス「市民病院線」に乗ってみた。
 バスは、「約200メートル間隔」の停留所でこまめに集客している。
 車高(路面から床面までの高さ)は「26センチ」。ツーステップで乗降する大型路線バスのワンステップ目(約35センチ)よりも若干低いといえば、その車高を察していただけるだろう。
 乗客3人でスタートしたバスは、11番目の停留所「健康センター・郷土博物館」で16の座席がほぼ満席となった。
 「おやおや」
 『おひさしぶり』
 車内では、顔見知りの高齢者二人の会話が弾んでいる。
 「あれっ、奥さんは?」
 『入院しちゃったんですよ』
 「えっ、どうしたの?」
 『手術…、しましてね』
 「経過は?」
 『うまくいきました』
 「よかったですねー。いつも、ご夫婦ふたりで頑張って、立ち直って、えらいなー」
 『私は、もう、車(マイカー)の運転はやめたんです。週末は、子供たちの車に乗せてもらってますよ』
   「元気になったら、また、海外旅行とか、行きたいですねぇ」
 『行きたいですねぇ』        (つづく)    
(2007年10月19日)
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
22
小まめに動くおさんぽバス<3>
平成14年4月から(実証)運転がスタートした浦安市のおさんぽバス「市民病院線」。その「利用状況」は、
初年度=1日平均利用者数・約1400人(1便平均約18人)
同15年度=約1600人(約20人/便)
同16年度=約1650人(約21人/便)
同17年度=約1700人(約21.3人/便)
同18年度=約1800人(約22.5人/便)
と、年々増加傾向にあり、「新浦安駅」と「市民病院」を結ぶ約6キロのルートは市民に親しまれているようだ。
「市民病院」玄関先に掲示されたさまざまなバス時刻表。右上がおさんぽバスのタイムテーブル

 ちなみに、同バスの平成14年度利用者アンケート調査で、「利用理由」の上位にあげられているのは、「運賃が安い」「バス停が近い」「ほぼ時刻表どおりに来る」「ダイヤがわかリやすい」
 車中で、あらためて「おさんぽバス時刻表・停留所マップ」を眺めてみた。
 なるほど、「ダイヤがわかりやすい」というのは、うなずける。特に、午前8時台―午後7時台の運行は、どの停留所でも常に1時間3本(20分間隔)と覚えやすい。
 「市民病院」で下車し、同病院の玄関先に掲示されているさまざまなバス路線の時刻表も眺めてみた。
 同病院脇からは、JR「本八幡駅」「新浦安駅」行き、東京メトロ「浦安駅」「南行徳駅」「行徳駅」「妙典駅」行き、「現代産業科学館」行きのバスが出ている。その中でも、おさんぽバスの時刻表は、シンプルで分かりやすかった。
 10月19日、もうひとつのおさんぽバスルート「舞浜線」に乗るため、JR新浦安駅バスターミナルを訪ねた。すると、バス停に、こんな張り紙が。
 「『市民病院線』車両変更のお知らせ。10月中旬より順次、同線の車両が舞浜線と同型車両へ変更となります。バス車両の側面に行き先を表示いたしますので、ご乗車の際にお乗り間違えのないようにお気をつけください」
 「舞浜線」を待つ間に到着した「市民病院線」バス車両は、すでに以前とは違った型のものになっていた。運転士に聞くと、
 「あのバスは、故障が多かったんですよねー」
 初代おさんぽバス、お疲れ様!       (つづく)
(2007年10月26日)
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
23
小まめに動くおさんぽバス<4>
「近年、高齢者の積極的な社会参加などを背景に、路線バスはバリアフリー化に対応するノンステップ仕様が主流となっており、また従来の大・中型路線バスが入り込むことのできない住宅地や交通の不便な地域などを中心とした地方自治体主導によるコミュニティバスの導入増加にともない、小型かつノンステップの路線バスに対するニーズが高まっております」(国内自動車メーカープレスリリースから抜粋)
 だから、国内のバスメーカーも、「国産車ならではのきめ細かい設定」で、「公共の足≠ニしてお役立ていただくことが可能な」「コミュニティバスの需要増加に対応した小型ノンステップバス」の開発に力を入れているようだ。すでに、純国産の小型ノンステップバスも誕生している。
新浦安駅前で乗客を降ろす「おさんぽバス」。「市民病院線」「舞浜線」ともに新型車両=10月25日

 浦安市は、平成14年に運行を開始したおさんぽバス「市民病院線」の好評を受けて、同19年3月に同「舞浜線」をスタートさせている。
 新浦安駅前ロータリーで、おさんぽバス「舞浜線」の到着を待った。
 バス待ち行列の先頭は、
 「ついつい、買い物をしすぎちゃってね、駅前のショッピングセンターの特売で、安かったのよー」と、足元の大きな買物袋を指差して笑う高齢女性。
 やがて到着したバスは、以前「市民病院線」で乗ったフロント部分が突き出た車両ではなく、小型のキャブタイプだった。
 「あのかわいいバスは、クーラーがよく故障してたのよー」
 「あのかわいいバス」とは、初代おさんぽバスのことで、オーストリアに本社を持つバス車体メーカ製(クセニッツCITY3CNG)。フロントドアが大きく開き、広い窓の、一度見たら忘れられないかたちをしていたが…。
 「舞浜線」では、今年3月のスタート当初から、現在走行中の国産車「日野ポンチョ」が採用されており、この10月中旬から「市民病院線」も同車両にリニューアルしている。
   新型車両に乗ってみた。入り口はノンステップ。低くフラットな床には窓を背にした向かい合わせの座席。後方部にはツーステップ高い座席も設けられている。
 発車間もない車窓の景色はまさにトゥモローワールド。低い車体の窓から、駅周辺の高層ビル群がひときわ高く見えた。(つづく) 
(2007年11月2日)
検証 まちトップへ

検証・まち  
<新交通機関>
24
小まめに動くおさんぽバス<5>
路線バスの車体に「認定 標準仕様ノンステップバス 国土交通省」というステッカーが付いていることがある。
 このマーキングは、平成12年制定の「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(いわゆる交通バリアフリー法)に基づき、国交省がとりまとめた「ノンステップバス標準仕様」認定項目を全てクリアしたお墨付き。細かく設けられた同認定項目の中の、「乗降口」に注目してみると、
○乗降口の端部は路面と明確に識別する
○乗降口にステップ照射灯などの足下照明を設置し、夜間の視認性を向上させる
○乗降口の一つは有効幅80センチ以上とする
○乗降時のステップ高さは28.5センチ以下(小型については30センチ以下)とする
○傾斜は極力少なくする
○乗降口の両側(小型では片側)に握りやすくかつ姿勢保持しやすい握り手を設置する
JR京葉線・舞浜駅のバスターミナル。「おさんぽバスのりば」の表示は分かりやすい

 国交省は、同16年度から、この「標準仕様ノンステップバス」に「補助金を重点化して交付し、ノンステップバス普及促進を着実に推進すること」としている。推進の目安は、同22年までに「バス総車両数の20〜25%ノンステップ化」。
 ちなみに、浦安市を走る「おさんぽバス」車両(「日野ポンチョ」)にも、緑色の国交省認定ステッカーが張られている。
 今年3月に開通した浦安市のおさんぽバス「舞浜線」に乗ってみた。JR京葉線・新浦安駅から同舞浜駅まで、約40分の行程は、なかなかおもしろい。新浦安駅前高層ビルの谷間を、「ディズニーリゾート」の「トゥモローワールド」にたとえるなら、公共施設を巧みにつなぎながら進む川沿いや住宅街の細い道の景観は「イッツ ア スモール ワールド」。
 こまめな集客を繰り返しながら、終点に近い「富士見3丁目」「同5丁目」あたりで、14の座席は埋まり、立っている人も加えると乗客は20人を超えた。後部席で、就学前の女の子が、窓越しに併走する循環バスを指差しながら、
 「ねえねえ、あれも、おさんぽバス?」と隣の母親に聞いている。
 「いいえ、このバスがおさんぽバスよ」と笑いながら答える母親。
『このバス』は、市民に愛されている。
(2007年11月9日) 
検証 まちトップへ

          
検証・まち  
<新交通機関>
25
赤字補てんと地域密着に
JR京葉線・新浦安駅から浦安市の「おさんぽバス」(市民病院線)に乗り、終点の「市民病院」(浦安市川市民病院)で下車すると、そこに市川市コミュニティバス南部ルートのバス停がある。
 ここで、コミュニティバスに乗り換えた。
 小型でかわいい「おさんぽバス」から、中型でがっしりとした車体の「コミュニティバス」に乗り換えると、車内がかなり広く感じられる。
 乗車口付近には、カラー印刷のバス路線時刻表と、「コミュニティバス通信」(第3号)が置かれていた。
 同通信を手に取り、バスに揺られながら読み進めていくと…。
 タイトルは、「協賛者と車体広告(掲示)を募集中!」
 「協賛金」の額は1口千円で、「10口以上の協賛をいただいた方は、車内の『協賛者一覧表』で氏名を掲示することもできる」とある。イメージ写真をみると、一覧表は優先席の頭上だ。
 車体広告(掲示)の掲載料は、「1日1平方メートルあたり660円(A3サイズで月3千円程度)」
 「協賛金」や「車体広告」に興味がある人のため、同通信の「よくある質問」を紹介しておこう。まずは、「協賛金編」から。
Q協賛金は何に使うの?
 「コミュニティバスの赤字を補てんするために使います。他の用途に使うことはありません」
Qこの制度を始めるきっかけは?
 「コミュニティバスを利用して、また地域に支えていただける制度として検討してきました。多くの方の事業への参画をお願いします」
Q自分の名前でなくても掲示できるの?
 「氏名は、ご自身の氏名でなくても掲示することができます。お子さんやお孫さんの名前でも大丈夫です」
Q名前は必ず掲示してもらえるの?
 「掲示することのできる名前(名称)には、制限がありますが、一般的な個人・法人名、屋号などは掲示できます」
 続いて、「広告編」
Qどのくらいの大きさで掲示できるの?
 「大小さまざまな大きさの広告が可能です。車体の全体を使ったラッピングも可能です」
Q掲示する場所は選べるの?
 「申し込み時点で空いていればどこにでも掲載が可能。しかし、車体の全面や窓など掲載することのできない場所があります」
Q広告料の他に必要となる経費は?
 「広告作成料や取り付け費用、その他各種申請料などが必要となります」
Q申し込みに必要なものは?
 「広告の原稿が必要になります。掲載できる原稿には制限がありますので、あらかじめご相談ください」
Q車内の広告はできないの?
 「募集しているのは車体広告のみとなります。今後検討します」
(2007年11月16日)
検証 まちトップへ

          
検証・まち  
<新交通機関>
26
バリアフリー新法施行
時間に追われ、ひとりで駆け回っているときは、見過ごしていたが…。
 「足を骨折して、現在リハビリ中」という80代高齢者の移動介助をする機会があった。バスに乗ったときは、入り口のノンステップやフラットな床に大変助けられた。電車に乗ったときは、駅構内に設けられた『エレベーター』が大変役に立った。「ありがたい」と思った。
 首都圏から離れた駅で、駅員に「エレベーターはありますか?」と聞くと、
 「うちの駅も、『中央』に負けてはいませんよ。ほれ、あそこ」
と、真新しいエレベーターの場所を教えてくれた。
 「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(いわゆる「交通バリアフリー法」)が施行されたのは、いまからちょうど7年前の平成12年11月。さらに、同18年12月には「バリアフリー新法」も施行されている。
 同新法では、「乗合バスのバリアフリー化」について、
 「平成27年までに、原則として総車両数約6万台のすべてについて、低床化された車両に代替する。また、総車両数の約30%に当たる約1万8千台については、平成22年までに、ノンステップバスとする」とうたっている。
 わが国の公共交通機関におけるバリアフリー化は、いま急ピッチで進められているようだ。
 国土交通省の資料(平成19年3月31日現在)によれば、
○「ノンステップバス等の車両数の推移」をみると、同18年度末の全国バス総車両数(約6万台)に占めるノンステップバスの割合は約17.7%。
 旧交通バリアフリー法が施行された同12年度(2.2%)と比較すると、約8倍の増加ぶりだ。
「低床バス」のほうは、4.9%→33.1%と約7倍増。「リフト付バス」は、0.6%→1.3%で約2倍増。
○「都道府県別ノンステップバス導入状況」のトップは、「東京」の49.71%で、「京都」(35.48%)、「埼玉」(31.3%)と続く。
 「千葉」は第七位の24.2%で、全国平均を約6.5%上回っており、平成22年までの国の目標値(約30%)まで、あと一歩といったところだ。
 ちなみに、「ノンステップバス導入率が高い事業者ベスト30」(全国・導入比率順・総車両数百台未満の事業者は除く)には、関東・千葉運輸支局の次の3事業者が入っている。
 6位「東武バスイースト」
(導入車両数84台/総車両数128台 導入比率65.63%)
 19位「東京ベイシティ交通」(45台/111台 4.054%)
 27位「京成バス」
(243台/785台 30.96%)
(2007年11月23日)           
検証 まちトップへ


center@ichiyomi.co.jp 市川よみうり