検証・まち
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地域ケアシステムの活動<4> |
市川市内に住んで約30年のAさん(52)宅に、今年4月から1年間、自治会の「当番」(評議員)役がまわって来た。主な仕事は、「自治会費」「赤十字活動資金」「社会福祉協議会年会費」「歳末たすけあい運動」の集金と、向こう三軒両隣に回す回覧板の準備。
いままでは回覧板が届くと、そそくさと隣家にまわしていたAさん。高齢になった親から「当番」仕事を任され、あらためて回覧の中身をじっくり読むようになった。すると…。
「親睦推進」「防災・防犯・環境整備」「相互扶助・福祉」「行政協力・支援」など、自治会を通した「お知らせ」は多岐に渡っている。
その中で、気になるものがあった。左下隅に「地域ケアシステム」のマークが付いたチラシだ。催しの内容は、「体操」「手芸」など。費用を徴収するものもあれば、無料で参加できるものもある。「サロン事業」って、何? 主催の「地区社会福祉協議会」って、何?
「おしゃべりをしながら楽しいひと時を一緒に過ごしましょう?」と、チラシは呼びかけているのだが…。
地域活動に疎いAさんは、この催しが何なのか、いまひとつよく分からない。Aさんは、「?」のまま、チラシを回覧板にセットして、隣家にまわした。
「ひきこもりがちな高齢者、お友達を作りたい子育て家庭、地域とのつながりを持ちたい人のために、いま、たくさんの地域でサロン活動が始まっています」
今回は、地域ケアシステムに関連した「サロン活動」について、コミュニティワーカー・幸前文子さんがまとめたリポート『見聞録O』を参考にしながら考えてみよう。 ―「サロン活動」って何?
「おしゃべりを楽しんだり、地域の情報を教えてもらったり、近所の顔見知りをつくったりできる『集いの場』『交流の場』のことです」
―具体的にどんな催しが行われているか?
「地域、対象者によってさまざまなサロン活動があります。参加費をいただいて手作り品や料理を作ることもあります。おしゃべりを楽しむだけの会もあります」
―参加すると、どんなメリットがあるのか?
「こうした人と人のつながりが、イザ!というときに役に立ちます。地域にどんな人が住んでいるのか、地域を知るきっかけづくりにもなります」
「輪踊り」「フラワーアレンジメント」「体操」「勉強会」「演芸」「おしゃべり」など…。
「地域のニーズに合わせて、オリジナルのサロン活動を展開してみませんか?」
「サロン活動」には、「こうあるべき」という規制はない。住民が主体となって、地域の様子に合わせた活動を展開していくもののようだが、その実情は…。
(つづく)
<2006年6月2日>
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地域ケアシステムの活動<5> |
「市川市地域ケアシステム」の拠点やチラシ・パンフレットなどで目に付く「シンボルマーク」。よく見ると、ケアという横組みの文字が鳥の形にレイアウトされ、その口ばし部分にハートマークの入った袋がぶら下がっている。
図柄の意味は、「幸せを呼ぶといわれているコウノトリが、皆さまのもとに愛(温かい心)を届けます」
「幸せを呼ぶコウノトリ」の傍に、市社会福祉協議会のマスコットキャラクター「てるぼくん」を見かけることもある。
「てるぼくん」は、「明るく元気な地域をみなさんと一緒につくっていく」てるぼファミリー(てるパパ・てるママ・てるばあ・てるじい・てるねぇ・パオくん)の一員。てるてる坊主のような、2頭身の愛くるしいキャラだ。
「コウノトリ」と「てるぼくん」は仲良しで、よく行動を共にしている。 | 南行徳ケア拠点に「ふれあい会食会」の受付が設置されてロビーは大にぎわい=6月1日 |
南行徳地区社会福祉協議会(歌代素克会長)は、昭和61年の設立以来、「ふれあい会食会」をはじめとする地域に根ざした福祉活動を行ってきた。平成14年7月からは市の推進する「地域ケアシステム」にも取り組み、現在、「相談事業」「サロン事業」を展開している。
6月1日、南行徳地域ケアシステムの拠点=南行徳公民館を訪ねた。1階ロビー右奥に設けられた拠点事務所入り口には、「コウノトリ」と一緒に、こんな張り紙が。
『みなさんの地域に福祉のなんでも相談所≠ェできました! ここでは地域住民が主体となり“福祉のなんでも相談”を行います。その他、ひとり暮らし高齢者への会食活動・身近な声かけなど地域の独自性を活かして、行政・社会福祉協議会と協働し、福祉サービスを推進していきます。ぜひ、一度お越しください』
平成14年に相談業務をスタートさせて以来、住民の利用状況はどうか? 現在、月2〜3回相談業務を担当しているという男性相談員に尋ねると、
「ぼちぼちですね。相談に来るのは、女性の方が多いですよ」
―相談の内容は?
「いろいろです。『聞く耳』を持って対応しています。『悩み事』は人に話すだけで半分は解決するものです。でも、中には、法律的・専門的な相談事もありますよ。そんなときは、行政の制度などとの『橋渡し役』をします」(つづく)
<2006年6月9日>
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地域ケアシステムの活動<6> |
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地域福祉を推進するための最小地域範囲(小域福祉圏)は、一般的には人口2万人程度、あるいは小・中学校区程度が望ましいとされているが、市川市の場合は? 「市川市地域福祉計画実施計画」(市保健福祉局保健福祉政策室・平成17年3月発行)の『地域福祉推進の基本的な考え方』によれば、
「本市では社会福祉協議会支部のエリアとします」
その背景は?
地区(支部)社協では、昭和61年から『地域ぐるみの福祉ネットワーク事業』、平成13年から『市川市地域ケアシステム』が実践されており、自治会長や民生委員児童委員などの地域福祉活動を担う人材による推進組織体も設置され、すでに各種活動が進められていることから、 | 地域ケアに役立てようと、保健士から「転倒予防」知識を学ぶ南行徳の相談員たち=南行徳公民館 |
「新たに地域の範囲を設定することは、社協支部で進めてきている地域ケアシステムの取り組みとの整合性がとれなくなり、かつ実践している市民の混乱を招く恐れが高いことも想定されることから、社協支部のエリアを『小域福祉圏』とするものです」
しかし、
「それぞれのエリアの人口規模が一定ではなく、また学区をはじめ、市域にはさまざまなエリアの設定があるため、将来的には小域福祉圏そのものの見直しも視野に入れる必要があります」
市内14の社協地区(支部)の各人口(平成17年3月現在)を比較すると、「真間」「国府台」が約6千人と少なめで、「宮久保」「曽谷・下貝塚」(1万人台)、「市川第1」「菅野・須和田」「八幡」「国分」「信篤・二俣」(2万人台)、「大柏」(3万人台)、「市川東部」「市川第2」(4万人台)、「行徳」(5万人台)と続く。だんトツは「南行徳」の約9万1千人で、「真間」の15倍以上になる。
そのような大所帯の南行徳地区社協では、同16年から地域ケアシステムのサロン事業を「小地域」で展開している。
「小地域」とは?
同地区を8つのブロックに分けるもので、たとえば第1ブロックは新井・島尻・広尾、第2=相之川、第3=香取・欠真間、第4=南行徳といった具合。
同地区の人口を単純にブロック数で割ると、各1万人台に按分され、「小域福祉圏として望ましい」かたちとなる。
(つづく)
<2006年6月19日>
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地域ケアシステムの活動<7> |
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「社会福祉法人・市川市社会福祉協議会」が自らの「地域福祉活動計画の概要」を説明する小冊子『わかちあいプラン』の中には、「小さな地域の未来予想図」が描かれている。そこには…。
ひとつの「地区(支部)社協」を拠点に、いくつかの「ブロック」に分けたイメージ図がある。そして、地区内で行われる事業を、「地区(支部)が中心」「地区とブロックが中心」「ブロックが中心」の3つに色分けしている。たとえば、
○「地域ケアシステム」の「相談事業」は「地区が中心」
○「学校」での「ふれあい交流会」は、「地区とブロックが中心」
○「公民館」を使った「ジャズコンサート」は「ブロックが中心」など。
「南行徳地区社協等を参考」にして作られたというこのイメージ図は、
「これからの小地域活動が目指す方向性です。ブロックの数は、地域と相談して決めていく予定です。また、(図に示された)事業はひとつの例であり、実際は地域の状況に応じた事業を展開する予定」(同小冊子6ページ※注から) | 南行徳公民館で開かれた「ふれあい会食会」。介護保険の改正点を聞き、メモを採る参加者も(右手前) |
6月1日に南行徳公民館で開かれた「ふれあい会食会」(主催=南行徳地区社協・協力=南行徳中部地区民生委員児童委員協議会)の場合は、同地区第3ブロック(香取・欠真間)と第5ブロック(福栄)合同の催し。両ブロックに住む独り暮らしの高齢者(65歳以上)約50人が招かれた。このように、同地区の八つに分かれたブロックは、催しの内容によってジョイントもあるようだ。
「みなさん、百歳まで、いやそれ以上、長生きしてください。いろいろな催しを考えます。『お知らせ』が届いたら、ぜひ出て来てください!」
主催側代表オープニングあいさつのあとは、「南部地域包括支援センター」職員による講演―『新しい介護保険について』。
介護保険スタートから5年が経過。今年4月からの改正で、
「改善する可能性の強い、軽い介護度のかたは、『介護予防サービス』を使っていただくようになりました。いままでは、できないところをお手伝いさせていただいていたのですが、これからは、できないところを一緒にさせていただくようになります。そうやって、いま持てる機能を維持・改善してゆく。それが、介護予防サービスなのです」 (つづく)
<2006年6月23日>
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地域ケアシステムの活動 <終> |
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「先日、近所の人に誘われて、『折り紙講習会』に行って来たわ」
80歳の女性・Sさんから、弾んだ声が届いた。
―参加者はたくさんいましたか?
「高齢者ばかり、5〜6人」
―どこの主催?
「う〜ん、よくわからない…」
―内容は?
「会費を払って、講師の先生の指導で折り紙をして、皆で一緒に昼食を食べて、おしゃべりをして、解散」
―楽しかった?
「こぢんまりとした、いい会だったわよ。先生に、『こうやって、手先をよく動かすと、ボケ防止になりますよ』って教えてもらったわ。私も、このごろ世間でよく言われている『介護予防』が必要な年なのかな…」
―また、行ってみたい?
「お誘いがあれば、ね。私は行くけど、夫(86))はガンコだから、たぶん行かないと思う。ねえ、あの講習会は『サロン』って呼ばれていたけど、サロンって、何?」
―「サロン」という言葉は、いま、流行っていますね。身近な「集いの場」「交流の場」という意味のようです。たとえば、市川市の「地域ケアシステム」という福祉推進活動の中でも、「サロン」が開かれていますよ。 | 地元ジャズバンドの生演奏を聴きながら会食。南行徳公民館にオールディーズの曲が流れる |
さきごろ南行徳公民館で開かれた「ふれあい会食会」(主催=南行徳地区社協)は、同地区(香取・欠真間・福栄)に住む独り暮らし高齢者(65歳以上)約50人が招かれた催しだった。
参加者たちは、「南部地域包括支援センター」職員の講演『新しい介護保険について』を聞き、「香取在宅介護支援センター」職員の指導で『健康体操』。頭と身体を動かしたあと、地元ジャズバンド「ホットハウス・ドランクラッツ」の生演奏を聴きながら「会食」を楽しむ。
今回の催しに協力した「南行徳中部地区民生委員児童委員協議会」(大澤順会長)のメンバー約20人も、参加者のくつろぐ姿を見て、ホッとした様子。
日ごろから地域の「よろず承り」「行政の制度との橋渡し役」として働く同委員のひとりで、地域ケアシステム相談員の野村新太郎さんは、
「肩を張らずに、こうした催しやサロン活動・相談事業をとおして、地域の中で人と人とのつながりの輪がひろがっていけばいいと思う」 (この項おわり)
<2006年6月30日>
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いま、認知症研究は、医学的にも急速に進んでいるが…。
さきごろ、市川市行徳に住む橋本侑紀江さん(66)は、『ボケは心の生活習慣病』(新日本文芸協会)という本を自費出版した。
4歳のときに父親を亡くし、中学を卒業するまで母親の実家(青森県)で育った橋本さん。当時、一緒に暮らした明治生まれの厳格な祖父の口グセは、
『息をして物を食っているだけでは本当に生きているのではない』
その言葉を聞くたびに、
「肉体に精神が伴って、はじめて人間なのだと思ったものでした」
時は流れ、橋本さんは行徳で家庭を持ち、地元のマラソンクラブに参加した。一緒に走る初老の女性に何気なく聞いてみた。
「なぜ、走るのですか?」
すると、
「ポックリ死にたいからです」 | 6月15日、行徳公民館で開かれた集いで、参加者の活発な意見を聞く橋本さん(写真左奥) |
びっくりした。さらに詳しく聞くと、
「身体を鍛えておくと、長患いしない。嫁さんに下(しも)の世話をさせるのはかわいそうだからねぇ」
「老いや死」はずっと遠い先の話だと思っていただけに、
「この言葉は大きなカルチャーショックでした」
昭和61年、大阪市が全国に向けて募集した懸賞論文「長寿社会への提言」にモヤモヤした40代の自分の思いをぶつけてみた。
惜しくも入賞は逃したが、文を書き纏(まと)める中で、「人は、なぜボケるのか?」
「それは自己逃避」という「仮説」を見つけることができた。
その後、家庭・職場の人間関係、老人施設のボランティアなどをとおして、「仮説」はだんだん「確証」に変わっていく。
今年1月、念願かなって出版した自書の中で、橋本さんが説く「ボケを生み出すプロセス」は、こうだ。
「私はいつもきちんとやっている。それができないのは恥だ」→「きちんとできない私を、自分自身が許せない」→「そんな私を認めない」→「そんな私は要らない」→「そして社会的な責任を負う大人の神経(思考)を抹殺(まっさつ)する」
これから、この「確証」をもとに、一歩でも何か具体的にできることはないか。現在、橋本さんは毎月1回、市内の公民館などで集いを開き、参加者を募っている。(連絡先=TEL・FAX047・397・8903)
<2006年7月7日>
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地域福祉のよりどころ<1> |
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「昨年(平成17年)、全国初の試みとして注目を集めた『市川市市民活動団体支援制度』(通称1%支援制度)。『NPO法人 生きがいと助けあい SSU市川』では本年度も『陽だまりサロン』で申請し、その結果が6月上旬に届きました。今年もたくさんの方々のご支持ご支援を頂き、希望金額に迫るご支援を頂くことができ、ありがとうございました」(同法人会報6月21日号)。
平成17年4月から毎週月、金曜日(午後1時―同4時)に同法人事務所活動広場(塩焼2丁目)で開かれている「陽だまりサロン」は、地域福祉のよりどころとして、
「高齢者には、健康づくりのお手伝い。筋力アップコーナーもあります。子育て中のお母さんは、お子さんと一緒に午後のひと時をゆったりお過ごしください。このサロンを、住み慣れたこの町でずっと暮らし続けるための憩いの場にしたいと思います。地域のかた、どなたでもご利用いただけます(参加費=1回100円)。お気軽にお越しください。皆さんの笑顔に会いたくて、スタッフ一同お待ちしています」(同会報)
「SSU市川」は、平成11年3月の発足(当時名称「塩焼シルバーサービスユニオン」)以来、「地域の福祉は地域の手で」と、「ボランティア精神に基づいた、きめ細やかな在宅福祉サービス」を有償(会員制)で提供している。 | 「みんな、お気に入りの健康器具で遊んでいますよ」と、SSU会長・千葉さん=「陽だまりサロン」 |
約7年間の間に、同法人会員(利用・運営・賛助会員合計)は、発足当初の116人から572人(今年6月15日現在)と約5倍に増え、活動内容も多岐にわたるようになった。 「独り暮らしや昼間独居の高齢者、子育て中の母親、障害者の自立を支援し、住み慣れた地域で暮らし続けることを応援する」ための「サロン事業」もそのひとつだ。
毎週水曜日(午前10時―午後2時)に開かれている「塩焼サロン」(会場・塩焼中央公園研修室)は、平成12年4月にスタート。
「楽しいから、もっとやって」という参加者の声に押され、同15年、SSU事務所内で「いきいきティーサロン」を開く。同サロンは、「健康・生きがい開発財団」の助成金を受けての、約4か月間の試行事業だった。
その後「もっと、ここで続けてやりたいね」と、同17年、市川市の「市民税1%支援事業」の助けを借りて誕生したのが、「陽だまりサロン」だ。 (つづく)
<2006年7月14日>
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地域福祉のよりどころ<2> |
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「NPO法人 SSU市川」が毎週2回(月、金曜日午後1時―同4時)、約33平方メートル(10坪)の同法人事務所活動広場(市川市塩焼2丁目)で開いている「陽(ひ)だまりサロン」に集う人々は、
「毎回、10人前後。イベントがあると、もっとにぎやかです。たとえば先月(6月30日)、『ハーモニカコンサート』があったときは、20人を超す人が集まりましたよ」と、同サロンスタッフ。
7月7日、「1回100円で、どなたでもご利用いただけます」という、同サロンを訪ねた。
チャリン。会場に備え付けの貯金箱に参加費の100円を入れて、サロンの仲間に加わる。 | 『…いつもいつも元気で過ごそう』と高橋百合子さん(右)=7月7日、陽だまりサロン |
さっそく、会場に備え付けられている「五十肩によく効く」という「筋トレ器具」を試してみた。
「そのヒモをグーッと引っ張っているとき、息を止めたら、ダメなのよ。おしゃべりをしながらやると、いいのよ。右腕、左腕、5回ずつなんだけど、ワタシは時々、途中で何回やったか忘れてしまいそうなのよね」
「今日は、会場一番乗り」という大正14年生まれの女性が、笑いながらアドバイスしてくれた。
初参加の緊張がほぐれる。
会場に到着した参加者を、飲み物や菓子、打ち解けた会話でもてなす3人のサロンスタッフ。「常連さん」約10人が揃(そろ)ったころで、
「今日は、七夕の飾り作りをやってみませんか。1年に一度しかできないことですよ。『イヤだ、やりたくない』という人も、やっている人を温かく見守ってあげてくださいね」
なるほど、熱心に短冊に願い事を書き込む人、そっぽを向いてしまう人、さまざまだ。
「毎回毎回、特にテーマを決めて何かを一緒にやっていただくということはしていません。このあと、みんなでおしゃべりをしたり、歌を歌ったり…。そちらの時間のほうが長いですね」
そんな、自由なサロンの雰囲気を保つ秘訣(ひけつ)をスタッフに聞いた。
「気を遣わないフリをして、こっそり気を遣うこと、かな」
この日、参加者が笹に吊(つ)るした短冊の「願いごと」を読ませてもらった。
「おり姫、ひこ星が無事に会えますように」「毎日元気で暮らせますように」「健康で長生きしますように」「いっしょに笑い、いっしょに歩き、いつもいつも元気で過ごそう」 (つづく)
<2006年7月21日>
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地域福祉のよりどころ<3> |
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7月7日午後3時、「陽だまりサロン」(SSU市川事務所活動広場・塩焼2丁目)で、常連さんたちが、気の合う者同士で寄り合って歌を歌っている。
メーンテーブルで小学唱歌を歌っているのは、80代の女性2人。
一曲歌い終えるたびに、顔を見合わせて、
「アッハッハ!」
と、大声で笑う。
「不思議だね。小さいときに習った歌は、よく覚えている」
『そうそう。歌詞が自然に口から出てくる』
そんな、語りのあとにも、また、
「アッハッハ!」
屈託のない笑い声が、印象的だ。
―このサロンのいいところは?
『気を遣わないで来られるところかな』
「ここで、みんな(常連さん)と顔を合わせられることがいちばん。いつもの顔が見えないと、あれっ、どうしたのかな? と心配になりますよ」
平成17年度、「NPO法人 SSU市川」が行った「助けあい事業」は、「陽だまりサロン」(96回)と「塩焼サロン」(塩焼中央公園研修室・46回)合わせて、延べ約7900時間。「支援費制度の居宅支援事業」(延べ約9100時間)に迫る力の入れ方だ。 | 歌は元気の源? ボランティアの伴唱で歌を楽しむ参加者=陽だまりサロンで、7月7日 |
「サロン活動は、参加者もスタッフも楽しんでやっています。楽しくなければ、続きません」と、SSU役員のひとり。
「塩焼サロン」は平成12年4月から毎週1回、「陽だまりサロン」は同17年4月から毎週2回開かれているが、
「現在、両方のサロンに顔を出してくださる人もいます。サロンに顔を出すことで、生活のリズムがつくれる。『また、会えたね』と、元気を確認できる。そこで、お茶を飲みながら、『こんなこともあるよ』『こうすると便利』などと話し合える」
そんなふうにして、
「サロンは、みなさんが、住み慣れた地域で最期まで暮らしていただけるように、支援していくためのものではないでしょうか」
午後4時。「陽だまりサロン」の歌姫たちの帰宅時間。「まだ歌い足りない」という演歌の歌姫も、
「続きは、次回のお楽しみ!」とスタッフに促され、名残惜しそうに帰り支度。次回も、きっと美声をたっぷり聞かせてくれるだろう。 (この項おわり)
<2006年8月4日>
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多岐にわたるボランティア |
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市川市内で、「高齢者を対象とした活動をしているボランティアグループ」の数は、市社協ホームページに掲載されている同社協登録公開団体だけでも21(平成17年4月現在)。
その『活動場所』は、「老人ホーム」「デイサービスセンター」「公民館」「自治会館」「地域福祉施設」「小学校」「個人(利用者)宅」など。
『活動内容』は、「演芸慰問」「在宅・自立支援」「福祉サービス」「送迎・移送サービス」「話し相手」「清掃」「弁当配食」「サロン活動」「会食会」「茶話会」「学習会」「歌や踊りの指導」など多岐にわたっている。
現在、高齢者施設などで歌唱指導を行っている「梨の会」(会員約40人)も、そんなボランティアグループのひとつ。同会代表の大塚包子さん(65)に、活動のキッカケを聞くと…。 | マイクを向けて歌唱指導する大塚さん(写真中央)=ホワイト市川・大ホールで7月27日 |
大塚さんは、「給食」「送迎」「傾聴」など、ボランティア歴約25年。平成9年、特別養護老人ホーム「ホワイト市川」(市内高谷)に「傾聴ボランティア」で入ったとき、
「施設側から、入所者の『合唱クラブ』立ち上げの話を持ちかけられました。誰か、協力してくれる人はいないだろうか、と」
その後、歌唱指導・ピアノ伴奏などメンバーを揃え、毎週木曜日の午前中、6―7人ずつローテーションを組んで同施設に通うようになって、
「今年で約7年になります。施設側のボランティア受け入れ態勢の良さを感じています」
梅雨明け間近の7月27日、ホワイト市川を訪ねた。午前10時を過ぎたころ、同施設通所・入所者が大ホールに続々と集まってくる。約50人を超す「合唱クラブ」の面々だ。
皆に配られる手作りの歌詞ファイルには、「春・夏・秋・冬」「あいうえお順」に数百曲が収められており、約7年間の「合唱クラブ」の年輪が感じられる。
歌唱スタイルは、一度握ったマイクを最後まで手放さない歌好きの人、お気に入りの曲だけに反応する人、ひとつひとつ歌詞をかみしめるようにして歌う人など、さまざま。
梨の会メンバーは、共に歌いながら、歌詞ファイルめくり・飲み物配り・手拍子・声かけ・スキンシップと、施設にすっかり解けこんでいる。
<2006年8月18日>
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話し相手は聴き上手<1> |
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7月20日から毎週木曜日の午後、市川市研修室(八幡3丁目)で開かれていた「お話し相手(傾聴)ボランティア講座」(全5回)。 最終日の8月17日、4回以上参加した21人に、講師から修了証が手渡された。
『あなたは、平成18年度お話しボランティア講座を修了したことを証します。市川市社会福祉協議会 市川市ボランティア協会』
「最近、『お話し相手ボランティア』を求める声(需要)が高まってきている。『施設』だけではなく、『在宅』からの相談も多い」と、主催の市社協。
平成16年に「任意団体」から「NPO団体」へと「脱皮」した市川市ボランティア協会(大西純子会長)が、市社協の委託を受け、今回の講座を開いた。
「ボランティア、がんばってくださいね」と、優しくひと言添えながら修了証を手渡す講師の山ア文代さん。 | 4〜5人のグループに分かれて相手の長所をほめ、認め合う傾聴講座のひとコマ=8月17日 |
山アさんは、平成8年から高齢者施設や病院などで「話し相手」を実践している「心のふれあいボランティア フレンズ」(会員約60人)の会長。活動スタート当時、「話し相手」ボランティアは周囲になかなか理解されない一面もあったが、近年の「傾聴」ブームに、
「やっと『心』の時代になった。それが、とてもうれしい」
「フレンズ流」の「傾聴」をひとことで言えば、
「むずかしい定義はない。技術ではなく、心(気持ち)から入る」
修了生のひとり、50代男性に同講座の感想を聞いた。
「参加の動機は、退職して、(自分自身が)人の話をいかに聞けないかよく分かったから(笑い)。『傾聴』が退職後の『第二の人生』の有効なコミュニケーション手段になればと思い、参加しました。楽しかったです」
ここで学んだ「傾聴」は、
「『相手の立場になって聴く』、『心をこめて聴く』ということに尽きますね」
―「傾聴」をキッカケに、これから実際にボランティア活動をやってみたい?
「はい。デイサービスセンターや、NPOとかで活動を展開できるんじゃないでしょうか。待っているだけでは、何も生まれませんからね」と積極的。
(つづく)
<2006年8月25日>
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話し相手は聴き上手<2> |
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7月20日から8月17日までの毎週木曜日、市川市内で開かれていた同市社会福祉協議会の「お話し相手(傾聴)ボランティア講座」(市ボランティア協会委託)。受講生に「現在、特別養護老人ホームで仕事をしている」という60代女性もいた。
―受講のキッカケは?
「たとえば、親しくなった施設利用者が、廊下で話しかけてきたとき。忙しいからと、いいかげんな返事をしていたことがあったので、それではいけないなぁと…。では、どんな話をすればいいのか…」
―「傾聴」講座を受けて、何か変わったか?
「気持ちの上で違ってきたような…、傾聴の基本のようなものが分かったような感じがします」
熱心に「傾聴」を学び、それを仕事やボランティア活動に役立てようとする受講生たち。受け入れの現状も気になるところだろう。同講座最終日(8月17日)、市川市南行徳デイサービスセンター長・中野美津子さんと、東京歯科大学市川総合病院看護師長・園田満子さんが「はじめよう、始めの一歩」と銘打って、それぞれの施設のボランティア受け入れ・その活動について語った。 | 傾聴講座で現場のボランティア受け入れの様子を語る中野さん(写真左)と園田さん |
まず、
「いま、(現場で)いちばん足りないのは、傾聴ボランティアなんです」と中野さん。
ボランティアとして初めて現場に入るときの必須アイテムは、
「笑顔。ニコッと微笑んでみせるだけで相手はホッとする。(反対に)こちらがコワイ顔をすれば、相手も怖い顔。こちらが緊張すれば、あちらも緊張。そのさまは、まるで、鏡のようですよ」
次は、
「声かけ。『○○さん』と、名前を覚え、呼んであげると喜ばれますね」
そして、短い言葉でもいいから
「ステキね!」「わあ、きれい!」「おいしいね!」「すごい!」「やさしいね!」「ありがとう」「うれしいわ」など、こちらの気持ちを素直に伝える。
「あっ、あの人とはあまりおしゃべりできなかった」と気づいたときは?
「帰り際、玄関まで送っていって、『もう、帰っちゃうの? さびしいな』『もう少し、話がしたかったな』と、名残惜しさを伝えることが必要」 (つづく)
<2006年9月1日>
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話し相手は聴き上手<3> |
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市川市社会福祉協議会主催『お話し相手(傾聴)ボランティア講座』(最終回・8月17日)から、現場のボランティア活動受け入れについて。東京歯科大学市川総合病院看護師長・園田満子さん、市川市南行徳デイサービスセンター長・中野美津子さんの話に耳を傾けてみよう。
零歳から100歳を超えるお年寄りまで、さまざまな患者を抱える570床の総合病院では、
「現在、外来患者の案内やお世話、小児病棟の遊び相手などのボランティア受け入れをしていますが…」と、園田さん。
より受け入れ門戸を広げるのとき、問題になるのは「個人情報保護」。いま、入院患者に「面会を制限してほしいか」「名前を出していいか」「電話の取り次ぎをしていいか」などを、
「一人ひとりにお聞きしている状態。なかには、看護師とも話をしたがらない人も…。でも、何気ない、ホッとさせるような会話は、必要だと思う。団塊の世代、お年寄りが増えていくなかで、日本の昔ながらの付き合いというか、人に親切にしようという心を思い起こさせる意味でも、これから(院内でのボランティア活動を)少しずつ広げていけるのではないかなあと、期待しています」
そんな諸事情も踏まえ、
「『傾聴』ボランティア希望の人とは、相談ということになるかと思いますが、今後ともよろしく」
南行徳デイでは、
「午前中は、利用者お迎え→施設到着→健康チェック(血圧・脈拍など)で、体調が良い人は入浴となります。うちでは一日、大体20―25人くらいが入浴されますが、4、5人ずつ順番に入るため、遅い順番の人は、待ちくたびれて、『まだか、まだか…』。一方、職員のほうは、介助で大忙し。フロアは寂しくなります。その時間帯、『話し相手』としてボランティアのかたが居ていてくださると、とても、非常に助かる。あと、昼食後の午後の時間帯ですね。午前、午後、どちらでも、大歓迎です」と、中野さん。
最後に、傾聴講座受講生と両氏の質疑応答も付記しておこう。
―どこのデイサービスセンターでも、傾聴ボラ受け入れOKか?
「施設管理者の考え方もあり、外部の人を受け入れない所もある。個人的にアタックしてみるもよし、ボランティアグループに入ったり、社協やボランティア協会問い合わせてみるのもよいでしょう」(中野さん)
―ボランティア受け入れ側として、「これだけは困る」ことは?
「宗教活動をする人。施設利用・入所者は、だれかに縋りたい、頼りたい気持ちがあるので、すぐに誘われてしまいがち」(中野さん)
「現在、活動していただいているボランティア団体は、内部の取り決めがしっかりしているので、私たちも安心して受け入れて入る」(園田さん)
<この項おわり>
<2006年9月8日>
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注目の傾聴ボランティア<1> |
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市川市が同市香取1丁目に設置した南行徳デイサービスセンター(社会福祉法人市川会運営)の廊下の壁には、「ボランティアさん、ありがとう!」と銘打って、同施設利用者・職員と「ボランティアさん」の交流写真がいっぱい飾られている。
デイルームに張られた9月の行事カレンダーにはほぼ毎日、「お茶会」「フラダンス」「手芸」「ウエスタンマジック」「小さな音楽会」「理髪」「大正琴」「浪花節」「民舞」「折り紙」「オカリナ」「日舞」「演芸」など、「ボランティアさん」たちの訪問予定が目白押し。
平成16年10月のオープン以来、地域密着型デイサービスセンターとして、「ボランティア」の活動を幅広く受け入れている同施設。最近、市内でも「養成講座」が開かれ、注目を浴びている「傾聴ボランティア」についても、 | 南行徳デイの廊下に張られた「ボランティアさん」たちの写真。どの写真からも笑顔がこぼれている |
「現在、12、3人の人たちが定期的に、それぞれ曜日を決めて入ってくださっていますが、まだまだ人数が足りません。『高齢の方々と話をしてみたい』という人がいれば、その『気持ち』を受け入れます。大歓迎です」と同センター長・中野美津子さん。
9月8日、午前10時から正午まで、「傾聴ボランティア」をしている人たちに、活動の動機や様子を聞いた。
男性Aさん(60)が傾聴ボランティアを始めた動機は、
「お年寄りとの付き合い方を勉強したい」
その根底には、
「自分の両親と上手く交流したいという気持ちがあった」
毎週1回(約2時間)、約1年間の活動を通して、
「ここの皆さんとは、自然なお付き合いができるようになりました」
自然なお付き合いのコツは、
「まず、『笑顔』だと実感しています。こちらが笑顔を見せると、相手も安心する」
両親との交流も順調?
「実の親となると、いろいろむずかしい面もありますが…、接点がつくれるようになってきました」
Aさんは、じっくり傾聴型。デイルームで、
「放っておけないな―と思う人がいると、その人のそばで、(あちらこちら移動しないで)そのまま時間が終了してしまうこともありますね」 (つづく)
<2006年9月15日>
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注目の傾聴ボランティア<2>
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市川市が同市香取1丁目に設置した「南行徳デイサービスセンター」(社会福祉法人市川会運営・中野美津子センター長)で、定期的に「傾聴ボランティア」を行っている人たちに、活動のキッカケや手ごたえを聞いた。
Bさん(30代主婦)は、市内の公民館の「傾聴ボランティア講座」修了生。学んだことを実際に役立ててみたいと、講座担当職員の紹介で同施設を訪ねるようになって、 「今日(9月8日)で3回目。施設の皆さんとの会話は、まだ表面的なところでとどまっています。これから回を重ね、顔馴染みになって、信頼関係ができたら、もっと話が進むと思う」
―活動を始めて「よかったな」と思うことは? | 手芸ボランティア(写真左)、傾聴ボランティア(同右)などが活躍する南行デイセンター=9月8日 |
「主婦は、家庭内では、何をやっても『できてアタリマエ』。褒(ほ)められることはありません。外では、知らない人とは話をしないのがフツウです。傾聴活動をとおして、利用者が私のことを待っていてくれ、前回話したことを覚えていてくれたりすると、すごくうれしいです。頑張って来てよかったと、ホッとします」
デイルームで、高齢者に囲まれると、まだ若干の緊張が隠せないBさんだが、「ありがとう」「また来てね」の声が何よりの励みだ。
市内在住で、都内のNPO団体の「傾聴ボランティア講座」を修了した40代のCさん(公務員)は、講座の先輩の紹介で、毎週1回(約2時間)の活動を始めて1年あまりになる。その間の感想をひとことで言えば、
「いい人生勉強をさせてもらっています」
―具体的には?
「日常的なおしゃべりの中で、聞くこと・話すこと・コミュニケーションすることの大切さを感じますね」
―講座で学んだことは役に立っている?
「はい。でも、学んだとおりにいかないこともある。現場に出て、慣れで、臨機応変、スッとできるようになることもある。だから、基礎知識を活用する場所・機会があるとないとで、違いが出てくる」
―傾聴の現場経験者として、後輩に何かアドバイスすることは?
「傾聴は、気張らず、『お互いさま』の精神で。傾聴相手に教えられることも多いです。私は、毎回、相手の器の大きさを感じています」
<2006年9月22日>
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2007年から先は!?<1>
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「平成17年における市川市の年齢別人口は、零―14歳の年少人口=13.4%、15―64歳の生産年齢人口=73%、65歳以上の老年人口=13.7%となっています。今後、出生率の減少や団塊の世代の高齢化などにより着実に高齢化が進み、平成22年の老年人口の割合は16.4%に達するものと予測されます」(『市川市の年齢構成の推計』市企画部企画政策課資料)
同資料によれば、その後の老年人口率予測は、同27年=約19%、同32年あたりで20%を超える。なるほど。これから、「団塊の世代」の高齢化は、「着実に」、ぐいぐいと老年人口率を押し上げていくようだ。
第2次世界大戦直後の昭和22―24年に生まれた「団塊の世代」は、日本の全人口の約5%以上(約700万人)を占める。もう少し幅を広げて、同18―21年生まれの「プレ団塊」と同25―28年生まれの「ポスト団塊」を合わせると、「団塊層」は日本総人口のほぼ10%と、厚みを増す。 | 第1回講座・渡邊一雄さんの話に耳を傾ける参加者たち(9月2日、アクス本八幡職員研修室) |
競争意識が高く、多くの「企業戦士」を生み出してきたこの世代が、今度は高齢社会をどのように動かしていくか? どのように変えていくか? 団塊世代の「定年退職」が始まる平成19年は、「2007年問題」と呼ばれ、早くも不安と期待の入り混じった論議が各所で交わされている。
市川市社会福祉協議会は、9月2日、9日、23日の3日間にわたり、「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊世代の定年後の生き方―」を開いた。
「ボランティアや市民活動への関心が高まっている中で、福祉だけでなく、様々な分野でシニアの活躍が期待されている。同講座を、これまでの人生経験や技術・趣味を活かした新たな活動を踏み出すきっかけ≠ニしてほしい」と企画。
シニア(団塊世代)に焦点を合わせたこの講座には、市外からの問い合わせもあり、毎回40人を超す受講者が集まった。
会場を見渡すと、受講生の半数以上はシニア男性。「何か質問はありますか?」という講師の問いかけにも、盛んに手が挙がり、「団塊パワー」が身近に感じられる。皆、それぞれ、退職後の「自分探し」に余念がない。同講座が、シニアの「地域デビュー」のキッカケとなるか? (つづく)
<2006年10月6日>
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2007年から先は!?<2> |
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「私も、以前は40年間、大手企業でモーレツに働いてきた企業戦士でした」 市川市社会福祉協議会主催の「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊世代の定年後の生き方―」、第1回(9月2日)の講師は、全国社会福祉協議会ボランティア活動振興運営委員・渡邊一雄さん(70)。
「大学を卒業し、一流企業に入り、出世を目指すことは人生最高の価値であることを一点の疑いもなく信じていた」人生の転機は、米国ノースカロライナ州ダーラム市に、企業の現地社長として赴任したときに訪れた。当時、「企業戦士」だった渡邊さんは、
「(同地に)工場を造り、人を雇い、月給や税金を払うのもリッパな社会貢献。寄付は全て断れ」と、
会社の玄関に「ボランティア出入り禁止」のポスターを張った。
ところが、工場火災を同市の消火ボランティア、娘の急病を救急車運転ボランティアに助けてもらったりしているうちに、 | ユーモアを交えて米国での感動体験を語る講師・渡邊さん=9月2日、アクス本八幡職員研修室 |
「ちょっと、待てよ。自分はいままで何をしていたんだ。何かを忘れてはいないか」と思いはじめた。
「自分の人生の中に、『地域社会への思いやり』という言葉はあっただろうか? ただ仕事をするだけでなく、家庭でも地域社会にも愛される、それこそが本当の人間ではないだろうか」
「ボランティア出入り禁止」のポスターをはずした。でも、具体的にどのような社会貢献をすればいいのか、そのときは、まだ分からなかった。
あるとき、同市で全米少年野球大会が開かれることになった。渡邊さんの会社も目立たぬ程度の寄付に応じた。すると、地元チームの監督から、「開会式にピッチャーズマウンドで国家を歌ってほしい」と頼まれた。これも小さな社会貢献か? と覚悟を決めて、懸命に歌った。球場全体から嵐のような拍手が起きた。子供たちが、走り寄ってきて、大歓迎してくれた。身体が震えるような感動を覚えた。そして、
「ボランティアは、特別なことをすることではない。自己犠牲でもない。その報酬は感動であり、感動こそ生きている証(あかし)だ」と悟った。
つまり、
「広東語で『為己為人(ワイケイワイヤン)』。他人のためにすることは、自分のためにすることなのです」 (つづく)
<2006年10月13日>
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2007年から先は!?<3> |
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「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊世代の定年後の生き方―」(市川市社会福祉協議会主催)。第2回目(9月9日)は、既に「地域デビュー」している5人の活動者(市内在住)たちの報告が、社協職員・受講者たちとの一問一答形式で行なわれた。
先ず、その中のひとり、原田昭男さん(63)の話を例に挙げてみよう。
―退職後、ボランティア活動を始めたキッカケは?
「退職して、家でごろごろしている状態だったので、妻から『お小言』をもらいまして…。妻の薦めで『何か変わったことがあるかもしれない』と、社協の『研修』に出席。その場で、『おもしろそうだ』と思った。それから2ヶ月くらいして、目の不自由な人の横に付いて外出支援する『ガイドヘルパー』の活動を始めた。その後、外出困難な高齢者や障害者を自分の車で送り迎えする『送迎ボランティア』にも手をひろげるようになり、今に至っている」 | 地域デビューの話に熱心に耳を傾ける講座参加者約40人(=9月9日・市川市役所第6委員会室) |
―退職前は、ボランティアをどのように思っていたか?
「建設土木関係に従事していた関係上、現場には身体の不自由な人や体調の悪い人は入れなかった。だから、ボランティア・福祉については、ほとんど頭になかった」―いま、高齢者や障害者と接していく中で、どのようなことを心がけているか?
「ガイドヘルパーは、少しでも相手と一緒にいる時間を大切に。送迎ボランティアでは、まず時間厳守。安全を心がけ、悪路を避け、スピードの上げすぎやドアの開け閉めにも注意している」。
―活動を始めて良かったことは?
「一つ目は、地域の人といろいろなところで出会ったり、話ができたりすること。二つ目は、ボランティア活動をしながら市川の『街』を知った。ああ、あんなところもある、こんなところもある、と。会社にいたときは、忙しくて街の中を歩いたことがなかった」
―困ったなあと思うことは?
「ガイドや送迎をして、市川はほかの街と比べて道が悪いことが気になる。歩道も狭く段差のあるところがある。事故がなければいいなあと思う」
現在、ひと月に12―13日ボランティア活動をして「生活が規則正しくなった」という原田さん。
「活動を終えた後の、『ありがとうございました』『またお願いしますね』という言葉が励みになる。楽しい」 (つづく)
<2006年10月20日>
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2007年から先は!?<4> |
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9月9日に市川市庁舎内で開かれた「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊世代の定年後の生き方―」(同市社会福祉協議会主催)第2回目は、「地域デビュー」で自らの生き甲斐を見出している中高年活動者(市内在住)たちの報告を聞くことができた。
原彰一さん(行徳ニューグランドハイツ自治会長)は、13年前、数人のマンション住人と共に「グリーンラバーズクラブ(GLC)」を結成。
「何かマンションに役立つことをしたい―との思いで、毎週日曜日の午前中、敷地内の草取り・植栽の剪定・花植えなど、できることから地道に活動を始めた」
現在の会員数は18人。入退会自由、気が向いたときに参加してもらうというのが前提の会だけに、 | 休憩時間、子供と遊ぶ手作り絵本を受講生に紹介する都築さん(右)=9月9日、市川市庁舎 |
「参加者が毎週作業に出たくなるような楽しみが必要。GLCの場合は、作業後の生ビール乾杯。最近、メンバーの中に『退職者』が増え、時には料理を交えたこの飲み会が昼食がわりとして期待されているようだ」
そんな会の要(かなめ)となるリーダーは、
「ひとりになっても続けていく覚悟がないと、皆を引っ張っていけない。会の原則をよく理解し、ビジョンを持って会員をリードする」役目を背負う。でも、
「人のためにやっているという満足感・充実感」が無償の果実。
「市内の公立幼稚園で15年間教師をしていた」都築恵美さんは、病気のためフルタイム勤務ができなくなり、退職。その後、「何か、自分にできること」を模索し、東京歯科大市川総合病院小児病棟のプレイルームやベッドサイドで子供たちの遊び相手をするボランティアグループ=「遊びのボランティア『ピンクのうさぎ』」を立ち上げた。
「入院中の子供たちに楽しい時間をプレゼントしたい」という都築さんの思いは、「病棟の厚い壁」(事故・感染・プライバシー保護問題など)を乗り越えた。
スタート当初5人だったメンバーは、現在32人。毎週土曜日の午前中、おもちゃやゲーム・絵本などを媒介に、子供たちの心をほぐし、笑顔を誘い出している。
「既存のグループに入り一ボランティアとして活動するのと、自分自身がやりたい活動を立ち上げるのは、それぞれに違った楽しさ、喜びがある」 (つづく) <2006年10月27日>
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2007年から先は!?<5> |
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「わたしたちは、こんな活動をしています」
9月9日、市川市庁舎内で開かれた「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊世代の定年後の生き方―」(同市社会福祉協議会主催)第2回を締めくくるのが、この二人。
5年前、安井智子さんは、高校受験を控えた娘に尋ねられた。
「お母さんの夢って何?」
「主婦」に夢があるのだろうか?と、すぐに答えを出せなかったが…。
当時、家庭内やカルチャー教室で「健康的」な麻雀を楽しんでいた安井さんは、その面白さを人に伝える「夢」を思いついた。
講師の資格を取得するために、
「半年間、一日5〜6時間、猛勉強した」
そのかいあって、いまは「NPO法人 健康麻雀全国会市川支部」代表。同会支部は平成17、18年度、市川市の「市民税による活動団体1%支援制度」にも参加、預かった支援金で社会貢献ができる団体を目指している。
「飲まない、賭けない、(タバコを)吸わない、健康的な麻雀」の入門指導・地域指導員養成をしていく中で、
「規律正しいマナーが習得できた」「いろいろな人と知り合えてよかった」「お手伝いをする中で、地域社会への貢献ができた」などの声を聞くと嬉しい。今年8月末までの、市内の延べ受講者数は約1400人。
ゲームに負けて悔しがる初心者には、根気強く指導し、
「『あきらめないで。一生楽しめるものを身につけることができますから』と励ましています」
鈴木時男さん(71)は、市社協地域福祉権利擁護事業の「生活支援員」。高齢者や障害者で判断能力が不十分な人たちの生活を、契約に基いてサポート(福祉サービス利用援助・財産保全・管理サービスなど)する仕事だ。
相手とコミュニケーションをとるときは、
「友達になる。『やってあげるんだ』という気持ちを少しでも出すと、警戒される。できるだけ相手の話に添って返事をし、相手の目線に沿った接し方をする」
そうやって、信頼の深い絆が結ばれると、
「訪問が5分でも遅れると、私の身に何かあったのではないかーと相手が心配してくれる。うれしいなと思う」
生活支援員には、研修や勉強が課せられ、気楽な仕事とはいえないが、
「私の身の回りには、『体力的にはちょっと無理かもしれないが、書道をやっているので、それで何かボランティアをやりたい』という90歳や、障害者の介助や認知症のお世話をしている78歳の姿がある」
そんな、人生の先輩たちの生き方を、
「ぜひ、私も、見習っていきたい」 (つづく)
<2006年11月3日>
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2007年から先は!?<6> |
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市川市内で、9月2日、9日、23日と、全3回の日程で開かれた「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊世代の定年後の生き方―」(市川市社会福祉協議会主催)。同講座最終日(23日)は、全国社会福祉協議会全国ボランティア活動振興運営委員・渡邊一雄さん(70)が、自らの経験に基いて、「地域デビューして老後を楽しく生きるための『十の定石』」を語った。
渡邊さんお薦めの「地域デビュー」達成プログラムは、
@「自分探し」
自分の歴史を振り返ってみる。それが、これからの「生きがい」を見つける座標軸になる。 | 団塊世代の受講生を励ましながら「修了証書」を渡す渡邊さん(右)=9月23日、アクス本八幡で |
A「個人力」
技能・趣味・体力・資格・生涯学習など、自他共に役立つ、「個人」としての力を身につける。
B「新しいネットワーク」
旧友とだけ交わるのではなくNPO・シルバー人材センター・社会福祉協議会・ボランティアセンター・町内会・老人クラブ・市民大学などで新しい友人をつくる。
C「自己完結性」
何でも、自分でやる。
D「肩書きを捨て、自慢話を控える」
「経験談」と「自慢話」は紙一重。会話の基本を学び、自分のアピールの仕方を研究する。
E「効率より納得」
地域では結論が遠まわしになることが多い。だから、ゆっくり話を聞く。何かを人に頼むときも、「命令」でなく、最後まで丁寧に確認して、「お願い」する。
F「ポジティブ・楽天的思考」
とにかく気軽に外に出る。待っていないで動く。「何とかなるさ、大丈夫!」と、人生70点主義。
G「顔施」と「寛恕」
にこにこ、笑顔で、心ひろく許す度量を持つ。
H「教える」より導く。
「頑固」「無神経」「威張る」「怒鳴る」高齢者は、嫌われる。愛される高齢者になるためには、若者に受け入れられるリード手法を。たとえば、「…しなさい」ではなく、「こうしたほうがいいよ」。
I「為己為人」(広東語でワイケイワイヤン)
人のためにすることは、自分のためにすること。ボランティア活動をするときは、3K(気軽に・継続して・根気良く)精神で。
熱心に、人生の先輩のアドバイスを聴く受講生たち。地域側にも、こうした団塊パワーを上手に活かす受け皿作りが必要だろう。
(2006年11月10日)
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既存施設の再利用<1> |
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『…和風建築で、1階は居酒屋風、2階は30畳の和室です。階段脇の坪庭の水の流れる音や、窓から見える緑が心をなごませてくれます』
この紹介文を読んで、どんな「施設」を連想するだろうか。「料亭」と答える人も多いだろう。
正解は?
「デイサービスセンター」
京成線実籾駅から徒歩約10分、習志野市実籾四丁目にあるデイサービスセンター「ネストみもみ」を訪ねた。
入り口脇の大看板には、
○地域交流広場
○訪問介護ステーション
○手作り料理教室
○手芸教室
○日帰り旅行
などの文字が並び、提供「メニュー」は盛りだくさんのようだ。
閉店した料理店が買い取られ、「ネストみもみ」に変身したのは平成17年7月。興味津津で、暖簾をくぐると…。 | アイディア次第でさまざまな地域交流の場となりそうな「ネストみもみ」の30畳大広間 |
1階は、勘定場・上がり座敷・テーブル・イス・カウンター・広い調理場と、料理店だったころの構造がそのままいかされている。
2階に向かう道筋には、高齢の通所者が使いやすいようにリフォームされた洗面所。坪庭を眺めながら、昇降機付きの階段を上がると、目の前に30畳の和室が広がる。
和室の一角では、「リサイクル手作り介護用品展」が開かれていた。ベッド脇に取り付ける小物入れやメガネケース、着物生地で作った肩掛け・ひざ掛け・杖(つえ)入れ、タオル地のエプロンなどが展示されている。
ハコ型・洋式・ワンフロアタイプのデイサービスセンターが多い中で、この和風・既存施設再利用型デイはかなりのサプライズだ。
オープンして1年余。現在、毎週月、火、水、金曜日の午前9時から午後5時まで、各日5人前後の通所者がいる。
同施設の運営主体である「(有)老人介護情報センター」(市川市八幡2丁目)の代表取締役・中川修子さん(54)は、デイサービスをはじめとする「通所施設」の基本的な役割と機能を、
@ 社会的交流
A 家族の負担軽減
B 機能回復
とした上で、「ここを、本当の意味での地域密着交流広場としていかしたい」と夢を語る。 (つづく)
(2006年11月17日)
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既存施設の再利用<2> |
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デイサービスセンター「ネスト実籾(みもみ)」(習志野市実籾4丁目、TEL047・471・2465番)の「手作り昼食」(1食500円)を試食させてもらった。
デザートの果物まで5、6品そろった、にぎやかな膳だ。利用者に好評の1品「里芋コロッケ」は、衣のサクサク感とサトイモ特有ののど越しの良さが食欲をそそる。
「みなさん、ぺろりとたいらげていかれますよ」と、調理担当の女性。
1階の座敷の広い窓から、通行人が中の様子を覗いてゆくのが見える。外観が料亭のようなデイサービスセンターに、興味津津といったところだろう。
「ネスト実籾」のおもしろさは、ほかにもある。
今秋から、同施設前駐車場(雨天の場合は施設内)で毎月1回、日曜日に「こだわり市場」が開かれている。この催しは、習志野市の「商店街活性化パートナーシップ事業」の一環で、「実籾コミュニティロード商店街」を産・学・官が力を合わせて活性化しようというものだ。 | お年寄りや子供も参加して活気にあふれた第2回「こだわり市場」=10月22日、ネスト実籾駐車場 |
事業に参加する「学」=大学生の「商店街活性化策の提言書」には、「高齢者にやさしい街づくり」が挙げられている。
第1回(9月18日)の「市場」は、とれたて野菜の紹介、トマトスープの無料配布、地元商店会のギョーザ・焼きそばなどの販売。2回目(10月22日)は、秋野菜販売や喫茶コーナー、メーンイベントの「そば打ち体験」が好評だった。今月26日の3回目(午前11時―午後2時)は、試食コーナーで「高齢者のためのメニュー開発」などが企画されている。
同施設の運営主体である「老人介護情報センター」(市川市八幡2丁目)代表取締役の中川修子さんは、こうしたイベントなどと連携して「高齢者と学生が仲良く会話している光景が見られる」という。たとえば、高齢者が料理のコツを披露すると、学生が「アッ、それって『おばあちゃんの知恵袋』だね」と感心する場面も。
通所施設(デイサービスセンター)を地域にオープンにすることによって深まる社会的交流。
「街の人たちが、おつかいの途中に立ち寄って、気軽にお茶を飲んで、声かけをして帰る。ここを、そんな『地域交流広場』としていかせるといいなと思います」
これから、地域の中で、デイの果たす役割は、いろいろ広がっていきそうだ。
(2006年11月24日)
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「これから」を模索<1> |
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今年9月に開かれた「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊(だんかい)世代の定年後の生き方―」(市川市社会福祉協議会主催)を受講したシニア(60歳前後)有志たちがグループを作り、これからの活動を模索している。
10月21日に開かれた第1回の「同窓会」は、
「10人(男性8人、女性2人)の参加があり、お互いの近況報告を行いました。そのうち五人がすでにボランティア活動に携わったり、活動を予定しているとのこと。また、退職後のバランスの良い生活、趣味のジョギングや釣り、生活習慣病予防の話など、多方面にわたる話題が提供され、休憩時間なしの充実した2時間でした」と、会の世話役・齊藤忠一さん(59)。 | 落ち葉ひろいや花壇整備ボランティアに参加して汗を流すメンバーも=曽谷小学校校庭、11月19日 |
このグループの今後の行方を追って、11月26日、市社協会議室(東大和田1丁目)で開かれた第2回「同窓会」を訪ねた。
会は、メンバー一人ひとりの近況活動報告からスタート。
「曽谷小学校の校庭の『落ち葉ひろい』ボランティアに参加してみました。久しぶりに汗をかきました。これからです。自分に何ができるか、何をやろうか、いま、一生懸命に探しています。」
「今年3月に退職。『会社人間』で、地域のことを何も知らなかった私ですが、『行徳まつり』で、朝から夕方まで、自転車・交通の整理をやってみました。初めてボランティア的なことに参加して、良い経験をしたと思う」
「ときどき、自宅近くの公園清掃や、小学生の登下校の送迎をしています。NPO団体の見学もしました」
「地元密着型で団塊の世代を応援するシステムづくりを考えている。イベントも企画していますので、ぜひ、みなさんのお力を借りたい」
「市内で開かれた『メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)』の講演会を聴いてきました。市医師会・保健センター・自治会が手を組んで、会場に入りきれないほど多くの参加者が集まっていました。大変勉強になりました。傾聴ボランティア講座や健康体操にも顔を出してみました」
「あと4年で定年。いま、会社の同志といっしょに清掃ボランティアをしている。作業のあとは、気持ちがいい」などなど。皆、この集いを「母港」として、それぞれの「体験航海」を始めようとしている。 (つづく)
(2006年12月1日)
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「これから」を模索<2> |
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「退職すると年賀状の数ががくんと減る。まず、それが目に見えて分かりやすい、大きな変化ですね」と、市川市在住の元商社マン・Aさん(68)は笑う。働き盛り(昭和40年〜50年代)は、
「日本の高度経済成長期で、休日が月2回しかなくても、誰も文句を言わないのがアタリマエの時代でした」
そんな「会社人間」たちの退職後の「地域デビュー」は、
「特に男性の場合、最初の『一歩』がなかなか踏み出せない―というのが本音でしょう」 | 「これからの活動」を語り合う「定年後の暮らし発見講座」卒業生=市川市社協会議室、11月26日 |
Aさんの場合は、
「6年前、たまたま友人に声をかけられて手伝うようになった福祉用具関係の仕事をとおして、地域に解け込むことができました」
このように、「会社人間」の「地域デビュー」は、「たまたま」「何かのキッカケ」がジャンプ台になって始まる。
―◇― ―◇―
「…では、これからの会の方向性を、どうしましょうか?」
今年九月に開かれた「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊世代の定年後の生き方―」(市川市社会福祉協議会主催)を受講したシニア(60歳前後)有志たちが、グループを結成して、今後の活動を模索している。
11月26日、市川市社協会議室(東大和田1丁目)で開かれた同グループの集いでは、メンバー(約10人)近況報告に続き、招かれた「先輩活動者」たちのアドバイスに耳を傾ける。
先輩たちは、
「まだ、中には『自分に何ができるか…』と、迷っている人もいるだろう。初めは確かに、分からない。何かひとつ、ポンとやってみて、それからの方が考えも出てくるのではないかと思う」
「あせらないでください。いろいろなことを経験してください、時間をかけて、自分の心から湧き出てくる気持ちを大切に」
「私も、退職後半年くらい、いろいろなところを『覗き見』しました」
「最初は『仲良しクラブ』的なものでもいいと思う。あまり型を決めず、みなさんの意見を十分吸収、思考錯誤しながら歩を進めていってほしい」と、助言。
会を見守る社協職員も、
「たまたま講座で知り合った皆さん一人ひとりの気持ちをゆっくりかなえていけるような、そんな集まりであってほしい」(つづく)
(2006年12月8日)
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「…そして、定年後は思ったより長い。厚生労働省の『平成11年度簡易生命表』によると、男性60歳の定年時の平均余命は20.91歳、女性は26.29歳である。なんと人生80歳として、その4分の1を定年後に生きる。余生どころか、これこそ人生の本番であり、これをどう生きるかが人生の幸福と不幸の分かれ道といえる」(渡邊一雄著『社会貢献イキイキ講座』創流出版から抜粋)
では、団塊の世代層が考える「老後の豊かさ≠竍幸せ≠決めるもの」は?
平成17年8月に野村総合研究所(NRI)が行った「団塊の世代のセカンドライフに関するアンケート調査」(複数回答)によれば、
「趣味の保有」(56.6%)を筆頭に、「貯蓄額・金銭的ゆとり」「夫婦関係」「自然との親しみ」「働くこと」「子供の成長、孫との係わり」「友人、新しい人間関係」「地域との関わり合い」「長寿」「学習や知的成長」などが挙げられている。
同調査項目の「セカンドライフでやってみたいこと」(複数回答)では、「国内外への旅行」(68.4%)が群を抜く。第2位の「自然散策・ハイキング・街歩き」(38.8%)に次いで、第3位「ボランティア活動」(26.8%)、第8位「新しい人間関係、友達づくり」(20.8%)、第9位「地域活動」(20.6%)も挙がっていることから、
「…アクティブな姿勢に加え、団塊世代の多くは、『人間関係資本』の大切さにも気付いており、会社員時代とは異なる豊かな人間関係を求める意識が高まっている」と同研究所は分析している。
―◇― ―◇―
今年9月に開かれた「定年後の暮らし発見講座―2007年問題と団塊世代の定年後の生き方―」(市川市社会福祉協議会主催)を受講したシニア(60歳前後)有志たちが、11月26日、仮称ではあるがグループの名前を定め、ゆるやかな「会則」のもとで船出した。 「市川ジャンピング・クラブ(仮称)」は、これから、
@情報交換
A会員相互の学習
Bボランティア活動への参加
を目的に定期的に集い、その中で、
Cそれ ぞれの「生き甲斐」を見つけていく。
当面は、10数人の会員で結束を固め、
「何か行動を起こすとき、ひとりでは戸惑うこともある。いろいろ話し合える場があれば、安心!」
「そうそう、みんなでコミュニケーションを取り合って、教えられたり、教えたり…」
「市内で開かれる大きなイベントにみんなで参加して、お手伝いしたりするのも、いいですね」
「今はまだ、何も分からないけれど、将来は、これから(新しい人生に)ジャンプする人たちのお手伝いができるかもしれませんね」とそれぞれの思いを語る。
拠りどころを定め、会員たちの船出の顔は晴れやかだ。
(2006年12月15日)
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