市川よみうり連載企画 |
市川市内に「放置自転車病」の兆しがあらわれたのは、オイルショックの昭和48年ごろから。伝染性の強い病気で、感染すると「だって、みんなとめてるじゃない」と、駅やスーパーの前など公共の場に自転車を放置するようになる。対処療法として「駐輪場の新設」「指導員の配置」「警告」「撤去」「モラルに問いかける」などが試みられている。しかし、治療後の経過は思わしくない。一時的に「良くなった」ように見えることもあるが、ちょっと気をゆるめると転移・再発するケースが多い。「水虫と放置自転車の特効薬が見つかれば、ノーベル賞ものですよ」とは市職員の弁。
ちなみに、平成11年度の同調査で「ワースト10」(放置台数約2千〜4千3百台)に輝いた駅周辺の、その後の取り組みをざっと並べてみよう(資料=内閣府・平成13年『駅周辺における放置自転車等の実態調査の集計結果』の概要について)。 | |||
JR本八幡駅北口から歩いて約10分の場所に住む女性(49)の「放置自転車観察日記」。徒歩で同駅周辺の店に買い物に出かけている日々、そこで見た光景だ。 7月22日(月曜日) 8月16日(金曜日) | |||
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今年7月16日から8月30日の間に、市川市が行った「八幡駅北口周辺の放置自転車集中移送撤去」状況は次のとおり。 移送撤去日数=20日 移送撤去回数=82回 移送撤去台数=1781台 <内訳> 北口ロータリー 〜国道14号 802台 パティオ裏 270台 一番街 139台 新道商店街 45台 市民談話室前 111台 行徳街道沿い 267台 千葉銀行前 14台 京成デパート 〜アクス前 89台 南口ロータリー44台 まず最初は、放置自転車に『撤去対象』『ここは放置禁止区域です。これより撤去を開始します』と書かれた黄緑色の紙が、次々と付けられてゆく。この間、「こちらは市川市です…自転車を移動してください…」と警告アナウンスも流される。待つこと約1時間。それでも移動しない自転車は、トラックに乗せられ、所定の保管場所へ。カギがかかった自転車を担ぎあげ、動かすのは、かなりの力仕事だ。 『市川市統計年鑑』で過去5年間(平成9−13年度)の「放置自転車撤去状況」を見ると、市域内の年間総撤去回数は千回前後、総撤去台数は2万台前後で推移している。平成13年度は950回(2万484台)。月平均で約80回(約1600台)の「移送撤去」が行われている。 そのかいあってか、9月6日朝の駅前広場=写真=は「美しい」の一語に尽きた。天候(雨)の影響もあるが、これほどまでに広い舗道を拝めるとは思ってもみなかった。 | |||
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先日、市川市が行った放置自転車撤去の後に、現場で「自転車を(市に)盗られた」と怒っている中年男性。 「運が悪かった」 −どの辺にとめていたの? 「JR本八幡駅北口、『シャポー』の外壁沿い。オレだけじゃなくて、みんなとめてるよ」 −保管場所に引き取りに行きますか? 「行く時間もないし…、面倒くさい。それに4千円も取られるし…、古い自転車だったから、新しいのを買うよ」 −これに懲りて、もう駅前駐輪はやめる? 「ほかのところにとめるよ」 −「ほか」ってどこ? 「それを言ったら、また持っていかれそうだから、ヒミツ」
九月半ば、本八幡駅周辺の放置自転車が運ばれて来る「平田保管場所」を訪ねた。8月に移送撤去された約1000台のうち、まだ引き取りのない約560台がずらりと並んでいる。 すぐに「現場復帰」できそうな自転車が多い。その一方、荷物カゴがゴミ箱のようになっていたり、タイヤの空気が抜けていたり、部品が欠損していたり−と、長期路上放置の後遺症が痛々しい自転車も目立つ。 「ここは、市内でも比較的『引き取り率』が高いところ。移送保管料千円のころは80〜90%、3千円で(平成11年)60%、4千円になってから(同12年以降)は40%くらい」と同所長。ここでも、移送保管料の引き上げに伴い、引き取り率は急降下している。 | |||
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「JR本八幡駅南口から徒歩10分くらいのところに住み、地下鉄新宿線を使って都内の会社に通っています。通勤途中、行徳街道のJR線高架下を通るのですが、そこは放置自転車が舗道をふさいでいて、車道を歩かなければならないこともあり、身の危険を感じています。何とかしてほしい」(55歳・会社員男性) 9月24日午前9時半ごろ、JR本八幡駅北口ロータリーで、「放置自転車移送中」のトラックを見つけ、後を追った。北口ロータリーから、国道14号線−行徳街道とゆっくり回り、辺りの放置自転車を荷台に積みあげている。JR高架下でも数台ピックアップ。荷台がいっぱいになったところでスピードを上げ、消えていった。 高架下の街頭指導員に、 | |||
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JR線本八幡駅南口から歩いて約七〜八分のマンションに住む大学生、いずみちゃん(19)は「中学2年生のとき、駅南口近くの大型スーパー前に友達と一緒に自転車をとめて、イソウテッキョされたことがあります」 −そこは自転車放置禁止区域だったのかな? とめたのは何時ごろ? −みどりのおじさんは、キビシイ? | |||
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市川市内で、ハンドルに「移送撤去」の警告フダをつけた自転車を走らせている人がいた。フダの意味を知っていれば、すぐに取り外すハズなのだが…。「何のためらいもなく」「堂々と」「ここにとめて何が悪い」−。路上駐輪を見るたびに、そんな言葉が浮かんでくる。
「わーっ、自転車がいっぱいたまってます」 | |||
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「セービ、ユードー、シドー、テッキョ」。これは、駅前放置自転車を一瞬のうちに消す呪文ではない。「駐輪場を整備し、そこに自転車をとめてもらうように誘導・指導。ルール(条例)を守らず放置すれば移送撤去」という自治体のオーソドックスな自転車対策を短くまとめたもの。セービ、ユードー、シドー、テッキョ…。さらに何を加えれば、放置は減少するのだろうか?
では、「放置自転車」とは、どのような状態の自転車を指すのか ? 市川市内、京成八幡駅近くのスーパーに自転車で買い物に来た主婦(70)に見解を聞いてみた。 「何かをほったらかし、おきっぱなしにするのが『放置』でしょう。買い物をする間だけ自転車を道にとめるのは、『放置』じゃなくて『いっとき駐輪』よ」 −では、『放置』となる基準はどこに? 「『放置』というのは、道ばたの『いっとき駐輪』に便乗して、長い間とめ続けることじゃないかしら」 −「長い間」とはどれくらい? 「スーパーの買い物だけならせいぜい1〜2時間くらいだから、それを超えたら『放置』と言ってもいいでしょうね」 −市の「自転車等の放置防止及び自転車等駐車場の整備に関する条例」では、「『放置』=自転車等の利用者等が、自転車等駐車場以外の公共の場所に自転車等を置き、かつ、当該自転車等を離れて、直ちにこれを移動することができない状態」。 「へぇー、キビシイのね。そんな条例があるとは知らなかった…。『放置』するとどうなるの?」 −「市長は、放置禁止区域内に自転車等が放置されているときは、当該自転車等をあらかじめ市長が定めた場所(保管場所)に移送することができる」 「放置禁止区域ってどこらへん ?」 −大まかにいえば各駅周辺。ほら、京成八幡駅のまわりにも「駐輪禁止」の看板がある。 「でも、看板の前に自転車がしっかり並んでいるわよ。あまり効力はないみたいね」 −??? | |||
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駅周辺の大量放置自転車の弊害を大きく五つにまとめると、 〈1〉生活環境の阻害 歩行者の通行妨害、交通事故の誘因、付近商店の営業妨害、救急車・消防車の緊急活動の障害。 〈2〉都市機能の低下 駅前広場・駅周辺の舗道、緑地帯などが自転車に占拠されるため、それぞれの施設が本来の機能を発揮できなくなる。 〈3〉都市美観の阻害 特に、無秩序・乱雑な駐輪状況や廃棄車の存在は、著しく美観を阻害する。 〈4〉盗難事件の多発 監視が行き届かないので、盗難に遭いやすい。 〈5〉財政負担の増大 自治体を中心に、駐輪場の設置・管理や長期放置の整理・撤去に努めているが、駐輪場を駅前の一等地に設置しなければならないなど、財政力の弱い自治体にとってはかなりの負担となっている。(参考資料『東京都自転車駐車問題等協議会報告書』)
まず、八幡三丁目の「八幡地下駐輪場」。近くに、こんな手書きの看板があった。
このあたりも、放置多発ゾーンのようだ。歩行をさまたげる自転車・バイクに困りはてた様子が看板からうかがえる。 | |||
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日曜日、自転車に乗ってJR本八幡駅・京成八幡駅周辺で「1回利用」ができる市営駐輪場をさがした。八幡3丁目の「八幡地下」「八幡第2地下」駐輪場は、駅に近く、利用料(24時間以内100円・高校生以下50円)とスロープの上り下りさえなければ、快適な駐輪空間だ。管理人に守られて地下に並ぶ自転車たちは、照明に映え、まさに「銀輪」ということばがピッタリだった。
地上に出ると、相変わらず「駐輪禁止」看板と放置自転車の熱い戦いが続いている。
1階はいっぱい、2階は半分くらいの駐輪状況。「1回利用コーナー」は1階の屋外にあった。管理人はいない。買い物袋を下げたご婦人が入ってきたので、
「当駐輪場の『1回利用コーナー』が満車の場合、ここから50メートル程市川寄りの『八幡第3駐輪場』へ自転車を置いてください」と案内書きがある。 | |||
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JR本八幡駅周辺の市営駐輪場数と利用台数、放置台数の状況は次のとおり(平成14年10月17日現在)。 施設数=12か所 収容可能台数=1万5百80台 実利用台数=7千4百92台 利用率=70.8% 放置台数=1402台 同駅周辺は市内で施設が一番充実しているが、利用率は6位、放置台数は3位となっている。
「(市内の)駅までの自転車利用者の65%は駐輪場を有料利用している。慢性的な放置をしているのは残りの35%。この35%を、駐輪場を使うように『習慣づけ』できれば、現状での放置自転車問題は解決する。ちなみに、通勤・通学者の放置対策を『第一次対策』、日中の買い物客などの対策を『第二次対策』とすれば、JR市川駅・本八幡駅域は『第一次対策』がある程度成果を見た段階にあり、今や『第二次対策』をどうするかの時機にある。日中の買い物客などの自転車は、長時間放置しないことから『第一次対策』と同様の強制撤去がしにくい面がある」(市川市自転車対策課)
「これからアキバ(秋葉原)に行く」という高校生。休日の「おでかけ駐輪」だ。 −電車で「おでかけ」のときはいつもここにとめてるの? 「ハイ、ここに決めてます」 −盗難にあったり、強制撤去されたことは? 「二度盗られた。テッキョされたことはありません」 −市営駐輪場の「一日利用」を知ってる? 「あのー、何でそんなに『チューリンジョー』にこだわるんですか? 急いでるんで、ほっといてください!」 すっかり嫌われてしまった。
同駅北口ロータリーから歩いて3〜4分、市民談話室裏手にある市営「八幡第7駐輪場」をのぞいてみると、管理事務所は休み。「一回利用コーナー」では、約150台の自転車がのんびり日向ぼっこしていた。自転車を押して入ってきた若者に、 | |||
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市川市は、これまでに「広報いちかわ」で何度か「放置自転車問題」を特集している。その中で、自転車利用者のモラルを問うばかりでなく、「新しい試み」もいくつか紹介している。たとえば平成10年6月6日号では市から、 『駅前の放置自転車は、通勤・通学の時間帯よりも、むしろ買い物などで利用される自転車が多くなる午前十時頃からが多く見られます。その一つの原因として、店舗や人が多く集まる場所に駐輪場が設置されていない場合が多いために大量の放置を招いていると考えられます。そこで、新しい試みとして、この問題を市と市民が一体となって考えようと、駅周辺の商店街などとの話し合いの中で、二つの取り組みを提案しました。<1>銀行などの駐車場を、土・日曜日に限って駐輪場として開放できないか<2>市が土地(駐輪場)を確保して商店会に提供し、管理を商店会でお願いできないか』
しかし、
次に広報「日曜版」(平成13年7月15日号)では、市民リポーターが市内の放置自転車の検証報告。JR市川駅北口周辺は『歩行者が肩身の狭い思いで歩かなくてはいけない現状』を指摘。秋から同地区で試験的に実施される予定の、『歩道駐輪場』に大きな期待を寄せている。『歩行者の通行の安全を考え、そこに係の人を配置し、(自転車を)きちんととめて整理できれば、少しは危険が少なくなるのでは』と市民リポーター。
それから一年後のいま、 | |||
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「自転車がいっぱいとまっているところはとめやすい。『自転車が自転車を呼ぶ』という感じ。おじさん(街頭指導員)がとめた自転車の世話をしてくれると、ますます『ここにとめてもいいんだな』という気持ちが強くなる。反対に誰もとめていないスッキリした場所や、監視がキビシイところにはとめにくい。JR市川駅北口ロータリーは、このごろとめにくくなった。買い物のときは、少しめんどうくさいが、ダイエー脇、アイアイロードの駐輪場を使っている。無料で、2時間以内がキマリだけど、遅刻しても大目に見てくれるし…」(22歳・主婦)
ロータリー広場からダイエー脇「アイアイロード」に入ると、歩道の片側を柵で仕切った「短時間歩道駐輪場」。これまでロータリーに散らばっていた自転車がこちらに引っ越してきたようだ。利用者の出入りは頻繁。自転車が柵内に入ると、駐輪開始時刻で色分けした紙片が付けられ、2時間ごとにチェック。市川グランドホテル脇の歩道にも同様の駐輪場が設けられている。こちらも満車。
駅前の買い物客などによる短時間駐輪を防止する一策として、平成13年秋にオープンした「歩道駐輪場」。1年後のいま、北口ロータリーの放置自転車は激減、成果は上々だ。
毎日午前6時から午後7時まで、ふたつの駐輪場には合わせて10人以上の整理員が配置され、それぞれの持ち場で利用者と相対している。一日の延べ利用台数は合計1600台あまり。
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「市川市の放置自転車に関する条例の全文を読んでみたいが、どこで閲覧できるのか?」という質問が数件寄せられた。
市条例をまとめた『市川市例規集』は市政情報センター、市内図書館、公民館の図書室などで閲覧できる。「市川市自転車等の放置防止及び自転車等駐車場の整備に関する条例・施行規則」は、同例規集「第13編・建設」の「第5章・交通対策」に載っている。
「街のにぎわい」として見逃していた放置自転車を「危ない」と感じたのは、駅前の歩道に並ぶ自転車につまづき転んだ人を見たときから。うずくまり、立ち上がれない高齢のご婦人。付近で買い物をしていた家族が駆けつけ、抱き抱えるように連れていったが…。転倒の原因を作った自転車の持ち主(たち)は、たぶんこんなアクシデントがあったことを知らぬままだろう。誰かが何気なくとめた自転車で、ケガをする人もいる。
市民の放置自転車に対する関心の低さを知らされたのは、さる10月に市文化会館(大ホール)で開かれた市主催の「自転車シンポジウム」(NPO青少年地域ネット21共催、市福祉の店協力、再開発振興会社協賛)。にぎやかなアトラクションが終わると、人々はさっさと客席から立ち上がり、去っていく。肝心のシンポジウム開始時、客席に残ったのは約20人。実に「お寒い」光景だった。
行政・大学・専門家と協力しながら街づくりを進めている市民組織「八幡まちづくりの会」が、10月3−6日に開かれた「八幡街回遊展」で「放置自転車に関するアンケート調査」を実施したところ回答62人(男性26、女性25、性別不明11)中、60人が放置自転車問題を「解決したい」と答えている。しかし「解決したい」一方で、「放置した経験がある」人が26人。 | |||
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「◎平成15年度駐輪場新規利用者を募集○平成15年度は利用出来る駐輪場に一部変更がありますのでご注意ください。※無料で利用出来る駐輪場が増えましたので、そちらを利用しようとするかたはこの葉書(同封)で申請する必要はありません。来年度より新たに無料で利用できる駐輪場は『市川第一』『八幡第三』『南行徳第一・三』『原木中山駐車場』」(市川市役所 自転車対策課)
11月末、郵送でこの「お知らせ」を受け取った市内福栄に住む女性(50)は…。
次に市内新田に住む男性(29)は…。 | |||
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一般的に<1>走行線上で<2>駅により近い位置にあり<3>自転車の出し入れがしやすく<4>整理員のいる駐車場は「利用価値が高い」といわれている。同じように「駅前放置駐輪」場も、走行線上で駅に最も近く、出し入れ簡単、街頭指導員の整列サービスが付けば利用感は★★★★★(五つ星)。ただし、運悪く「盗難」や「撤去」に遭う危険を考慮に入れると、総体評価は星いくつ?
冗談はさておき、市川の市営駐輪場について、読者の意見を紹介しよう。
−中野区で借りていた駐輪場は駅まで何分くらいだった? | |||
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「どんなに駐輪場を整備しても一方で放置自転車を黙認するようなことをすれば『元の木阿弥』。『なんだ、放置してもいいんじゃないか』ということになってしまう。市が本気で放置を無くそうと思っているのなら、もっと『徹底した撤去』を…。地域の人たちが『もう、ここ(駅周辺)にはとめられない』と観念する(諦める)まで徹底して撤去すれば、自転車は自然に駐輪場に向かう」(70代男性・南行徳在住) 「JR市川駅や本八幡駅のまわりには無料の『歩道駐輪場』や、かっこいい『地下駐輪場』があっていいですね。駅まで3分以内なら、まだ近いほうですよ。うち(東西線行徳駅)の周りは、古くて遠い駐輪場しかありません。市民として同じ税金を払っているのに、どうしてこれほど差があるのでしょうか? とても不満です」(20代女性・福栄在住) 前回紹介した「JR中野駅改札まで30秒」の駐輪場について、中野区交通対策課放置自転車係に問い合わせた。 「ああ、それは、『中野駅北口中央駐輪場』のことですね。区内でも人気の駐輪場です」 −本当に改札口まで30秒? 「まあ、そんなところですね」 −利用料は? 「同駐輪場は区内で一番高く、1階は月額2千2百円、2階は千9百円。3か月だと割り引きがあり1階6千円、2階5千百円」
−1か月、3か月定期利用の登録・利用手続きは?
−そんな『人気の駐輪場』がある北口周辺の放置自転車の状況は?
−『毎日撤去』? | |||
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1月半ばの平日昼下がりに、JR中野駅北口改札を出て、あたりを見回した。駅前の放置自転車はゼロに近い。横断歩道を渡るとすぐに「中野駅北口中央駐輪場」が見える。赤信号で待たされなければ、1分以内で入り口にたどりつける近さだ。 この日、2階建ての駐輪場(1300台収容)は「満車」。駐輪場の外に設けられた「1日利用スペース」も「満車」。それでも、まだ、自転車をとめようとしている人たちがいる。駐輪場脇の公園に設置された1日駐車スペース前に自転車を押して来た主婦(52)=中野区新井=に話を聞いた。
−「満車」の表示が出ているけど、どうしますか? | |||
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『…需要に追いつくために駐車(輪)場をふやしさえすればそれで良いというものではない。駐車場建設が新規の需要を誘発すること、せっかく無料駐車場を作っても駅から遠いためにほとんど利用されないという事例、新しく立体駐車場を整備したが放置の規制をしないので相変わらず駅前の混乱が解消しない例などは、単に施設を増やすだけでは問題の真の解決にはならず、施設をどのように使いこなすか、そして施設だけでカバーできない部分を規制やマナー向上などソフト面でどのように対処するかが重要であることを示している』(条例検討シリーズ第1巻『放置自転車条例』北樹出版から抜粋)
同書が編さん・発行されたのは昭和58年だが20年たった今でもその指摘は色あせていない。 どうして駐輪場にとめないの? 彼ら、彼女らは、おおむねこう答える。「金(駐輪料金)がもったいない」「駐輪場で(自転車を)出し入れする手間がかったるい(面倒くさい)」「出し入れと駅まで歩く時間を取られると、自転車に乗って来た意味がなくなってしまう」 −無料でロスタイムが少ない駐輪場ならとめる? 「まあね、とめるかもしれない」「でも、そんな駐輪場は、いまのところないでしょ。だから…」 放置常習者と駐輪場の縁は結ばれないままだ。
現在、市川市が管理する駐輪場は44か所。3万5千3百90台収容可能だが、実際に利用されているのはその約62%(約2万2千台)。空きスペースに放置自転車(約1万2千台)を誘導すれば、数字上では問題解決となるのだが…。
たとえば、東西線行徳駅から200メートル圏外に位置する「行徳第3駐輪場」(自転車500台、原付50台収容)。高架下の同駐輪場は行徳駅前が平成9年、「放置自転車全国ワースト2」になったのを機に無料化されたが、現在の利用率は45%。いくら無料にしても「圏外」では、自転車を呼び込むことはできなかった。 | |||
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「子供2人が通学にJRや都営新宿線を使うため数年間、市の地下駐輪場(八幡第1、同第2)を利用させていただいています」という主婦(46)=市川市曽谷=の意見を紹介。
−駐輪場の使い心地は?
−昨年の12月市議会で可決された「料金改正」は、値上げされるところ・現在のままのところ・無料化されるところと三通り。いままで「公共の用に供する施設」と定義されていた市内の駐輪場を「公の施設」と改め、利便性や施設の優劣による「利用料金体系の適正化」が図られます。改正の理由は<1>平成5年の駐輪場有料化以来、一度も見直しを行っていない<2>利用者から『各駐輪場の位置や管理時間などに差があるのに、料金が一律(1か月=1000円)なのはおかしい』との意見が多く寄せられている<3>駅周辺の駐輪場用地確保が困難ないま、民間が参画しやすいように料金の官民バランスを考えるなどで、料金アップしたところは管理人配置時間などが延びて便利になりますが、無料のところは整理員削減で不便になることが予測されます。
「八幡第1、第2地下は?」 | |||
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先週に続き、「家族が数年前から八幡の地下駐輪場を利用している」主婦(46)=市川市曽谷=の意見を紹介。
市川市は、4月から新たに市内5つの駐輪場(合計6千4百50台)を無料化することで、放置自転車の減少を期待している。一方で値上げも含むこの改正は、放置自転車対策のひとつだが…。 | |||
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「そこにとめると、撤去で持っていかれちゃうよ」 『(持っていかれても)いいんだよ、おじさん。また新しいのを買うからサ」 自分の店のまわりに自転車を置きっぱなしにしていく人と、いつもそんな会話を繰り返している京成八幡駅近くの商店主。 「実にあっけらかんととめていきます。このごろは注意しても、ケンカにもなりゃしない。自転車は『軽車両』で、ちゃんと『自転車法』というのもあるんだよ。不心得なとめ方をする人は、それを知っているのかなァ」
「キレイなところにゴミを捨てる人はいないでしょう」とニッコリ。なるほど、花の咲いているところには、ゴミひとつ落ちていない。 「自分たちの住んでいるところは、自分たちできれいにしよう」。仲間と、道にポイ捨てされたタバコの吸いガラや空き缶を集め、所定の場所に持って行く。 「拾い切れないほど集まりますよ」 散歩で、よく東西線南行徳駅前に行く。自分たちが利用している駅前はどのようになっているだろうか…。 朝、「シルバーの人たちが、放置自転車をきれいに『整理』していますね。自転車の数が多いので、とても『指導』まで出来る状況ではないでしょう」 駅前広場の地下に駐輪場ができれば、放置は一挙に解決すると思うが「いまは無理。ならば、この街の住民として出来ることは何だろう? 何かお手伝いできることはないだろうか?」と考える。 (つづく) | |||
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街頭指導員の自転車の並べ方を見ていると、後輪がビシッと一列になるようにそろえている。そうすると、見た目にも美しい自転車の列が出来上がり、歩行者の通り道が確保される。並べられた自転車が道なりに、絶妙のカーブを描くこともあり、さすが“プロ”の技だと感心してしまう。 しかし、街頭指導員がいなくなると、美しかった列もジグザグになる。とめたり引き出したり、自分のことだけに夢中になり、周囲は眼中にないからだ。できるだけ歩行者のジャマにならないように置き、隣の車を倒してしまったら元に戻しておく。放置するにしても、せめてそれくらいのエチケットは守ってほしいもの。
これは、昭和55年3月8日付「市川よみうり」のトップ見出し。記事の内容は、次のとおり。 「駅前の公共性の回復、歩行者の安全確保、自転車利用者のマナー向上を目的に『路上放置自転車クリーンアップ推進運動』が4日から18日までの15日間、国電(当時)市川、本八幡と、東西線行徳駅の主要3駅で展開され、上々の効果をあげている。この運動は、放置自転車追放に躍起となる市が市川署や各自治会、婦人会、商店会など65団体の協力を得て、2週間の予定で行うもの。これまでに例を見ない大がかりな運動だけに、各方面から期待と注目を集めている」
当時、市営の駐輪場は14か所(無料・合計約1万5千台収容)あったが、駅から離れているため利用者には不評。駅前や商店街には常時合計5、6千台ほどの自転車が放置されていた。ここで、そのころのクリーン作戦の様子を振り返ってみよう。 | |||
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春も間近の夕暮れどき、JR本八幡駅北口広場を埋める自転車の上を、強風が吹き荒れる。もし、周辺で火災が起こったら、いったいどうなるのだろうか−と不安になる。自転車の撤去に手間取り、消火作業が遅れることは必定。逃げる人たちが自転車につまづき、大ケガをすることもあるだろう。
「オレは20年このかた、駅前に自転車をとめているけど、事故なんて起きたことないよ」と、60代の“八幡っ子”。
開始当初。「全般的には目立ったトラブルもなく、今までとはうってかわって、国電市川・本八幡・東西線行徳駅前にはほとんど放置自転車が見られなかった。関係者は、このまま行けばきれいな駅前が実現できる−と大いにヤル気を見せている」(「市川よみうり」昭和55年3月8日付)。 | |||
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「何だかなあ…」 東西線南行徳駅前で、大学生のノボルくん(19)がつぶやく「素朴な疑問」。 その1: 「駅ロータリーの『駐輪禁止』の看板前にいっぱいとまっている自転車。『放置満車』という看板にしたほうがいいよね」 その2: 「駅ロータリー前の駐輪場(民営)は、管理人付きで有料(月額二千六百三十円・一日二百円)。駅前放置のほうは、整理のおじさん付きで無料。放置にサービスし過ぎじゃないの?」 その3: 「駅南側の畑や駐車場の脇、遊技施設の前の歩道は、いつも『放置満車』(笑い)。確か、南行徳が『放置自転車全国ワースト9』と新聞に載ったのは、去年の夏ごろだったよね。この調子だと、ワースト記録を更新するかもしれないよ」 その4: 「たまに市がテッキョをやっているけど、「『〇月〇日〇台撤去しました』という看板の前に、すぐまた自転車がとまる。テッキョにもメゲない住民パワーには感心するよ」 結局、「南行徳の放置自転車は、ずっとこんなカンジなのかなあ? 町の人たちが『このままでいい』と言うのなら、それも仕方のないことだよね。『放置は無くなったけれど、不便になった、住みにくくなった』じゃ困るし…」 −ノボルくんは、自分の自転車をどこにとめているの? 「通学用の自転車を市営の駐輪場に。都内の会社に通う父親も一緒にそこにとめている。父親は、『最初、市の駐輪場は無料だった。途中(平成五年)から有料になって、また今年の春から無料。(今回の)無料化は、南行徳がワースト9になったお陰だ』と喜んでいる(笑い)」 −駐輪場から駅まで歩くのは面倒臭い? 「片道五分のロスタイムってところかな。中学生のころからだから、もう慣れている。ちなみに、オカン(母親)は放置の常習犯」 −買い物で? 「イエース! 高架下商店街の『放置追放標語』にある『子供が見ている 親のマナー』をよく読んでほしいっス」 (つづく) | |||
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今回は、皆様からのおたよりを紹介。まず、「行徳の自転車ママさん」(38)は、 「『オカン(母親)は放置の常習犯』という意見にひと言。私たちは好きこのんで放置しているワケではありません! 子供を乗せて幼稚園に通ったり、1円でも安いものを求めて商店街やスーパーに買い物に行ったりと、自転車は主婦にとって無くてはならないものです。家族のため、時間やお金の節約のために自転車に乗っているのですよ。毎日、買い物のたびに駐輪場まで行ったり、駐輪料金を払ったりしていたら、何の節約にもならない。店側にとって私たち主婦は大切なお客様ですよね。だから、『ここにとめてはダメ』『あそこもダメ』と規制するのではなく、とめやすい場所を用意して『どうぞ、ここにとめてください』とサービスするのが本当でしょう。郊外の店舗に駐車場が必要なように、駅前の店には駐輪スペースがゼッタイ必要」
ごもっともです。
さっそく『いちかわ自転車情報局』をのぞいてみました。近隣市の自転車関連ページと比べても、確かに情報量が豊富ですね。ひとりでも多くの自転車利用者が、このコーナーにアクセスすることを祈るばかりです。
「以前『一日利用OK』だったところに行ってみると、とめられなくなっていたり、反対にとめられなかったところがとめられるようになっていたりと、戸惑うことが多い。いっそのこと、全駐輪場を一回利用OKにしてはいかがでしょうか。迷わなくてすみます。駐輪場の空きスペースは目いっぱい利用するべきです」 | |||
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