- いじめは絶対に許さない
教委が取る対策の近況
「決してなくならない」現実を何とかしようと、教委や市民がいじめ対策に取り組んでいる。国のいじめ緊急対策後、市川市と浦安市教委がどのような取り組みを進めたのかをまとめた。
特集「いじめ問題市川市」
いじめは許さない暴力、言葉での威嚇、ひやかし、仲間はずれ、無視など、市川市教委が平成17年度に把握できたいじめの件数は、小学校73件、中学校103件で、合計176件。同16年度は206件、同15年度は166件で、特に増加傾向は確認されていない。
しかし、全国で相次ぐ事件や、それを受けた取り組みなどにより、「『いじめは存在する』を前提に、学校生活の中で、個々の児童生徒の状況を注意深く見守り、学校全体とて『いじめは絶対に許さない』という意識がさらに高まってきている」と市教委は見る。児童生徒についても、「『いじめは許されない』『いじめに加担しない』『いじめを見て見ぬふりをしない』との意識化が図られてきている」と話している。
教育委員会の対応 市教委は、全国でいじめによる自殺が相次いでいることを受け、11月2日に市内全市立小・中・養護学校の教頭を対象とした「いじめの問題への取組の徹底」について臨時会議を開催。県から示された@取組の再点検A教職員の研修Bいじめをテーマとした「いのちを大切にするキャンペーン」―などの実施が盛り込まれた「いじめ緊急対策実施要項」について、充実・強化の徹底を図ったという。
また、同月7日から17日にかけては、全校に配置されている「特別支援コーディネーター」や「ライフカウンセラー」、生徒指導主任、園長・校長、音楽担当教諭などをそれぞれ対象とした会議を開催。取組の説明、問題対応への役割を話し合い、各職種層への周知を徹底したという。
学校での対応市内全校では、教職員を対象とした研修を実施するとともに、実態や指導の方向性などの再確認、「いのちを大切にするキャンペーン」などを実施。そのほか、毎月児童に「学校生活は楽しいですか?」「困ったことはありますか?」といった項目に記入してもらうことで早期対処を図る「生活振り返りカード」の導入や、悩みを抱える生徒の情報をまとめるワークシート活用スキルの研修など、独自の対策を行っている学校もあるという。
「いのちを大切にするキャンペーン」の内容は、児童・生徒の意見を反映しながら学校ごとに決定。小学校では▽「ウザい」「キモい」「死ね」など、児童が挙げた「言われてイヤな言葉」の撲滅を目指す「きたない言葉をなくそうキャンペーン」の実施▽いじめをテーマとした標語作成▽命の大切さや思いやりについて、全クラスで道徳の授業を実施―など、中学校では▽意見交換の場に地域の人が参加する全校道徳の実施▽生徒会を中心としたいじめに対するスローガンの決定▽いじめをなくす行動に賛同する人がその証としてオレンジのリボンをつける「オレンジリボンキャンペーン」の実施―などに取り組んでいる事例があるという。
- いじめをなくそう
オレンジキャンペーン
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市川市立妙典中(太田和誠校長、生徒749人)と同南行徳中(菅澤龍之助校長、生徒667人)の生徒会は、生徒自らいじめをなくす“証”にオレンジ色のリボンを2つに折って安全ピンで留めるオレンジ(リボン)キャンペーンを、全校生徒に呼びかけている。妙典中では、「やさしさの花を咲かせよう」という生徒会のスローガンの下、「いじめをしない、させない、見逃さない」のキャッチフレーズを掲げて取り組み、リボンは11月13日から廊下のトレイに置いて賛同する人が自由に手にできるようにした。生徒の6〜7割がリボンをつけている。
板垣敬太生徒会長=写真(上)=(2年生)は、「いじめによる自殺が全国で起きているが、妙典中からも出したくない。そのものについて生徒みんなが考えるきっかけになれば。いじめを止めるのは難しいかもしれないが仲間がいる。リボンはその証」と期待を寄せている。金子敏郎教頭は「ほとんどの子供がつけると思ったが、つけていない子供もいる。いじめや、自分の発言や行動について深く考えているからこそ、つけるのをためらっている証拠ではないか」とみている。
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一方、南行徳中では、新生徒会が「居心地のよい学校」「いじめのない学校」を掲げる役員で9月に発足。「たとえ学校にいじめがないとしても、これからもいじめが起きないように」(町直也会長=写真(中)=2年生)と、生徒会役員が手作りで全校生徒分のリボンを用意し、12月5日からキャンペーンを開始した。
同キャンペーンに参加するには「いじめをなくすことに参加する」誓約書への署名が必要。町会長は「簡単にリボンがもらえるほど、簡単な気持ちでは困る」とあえて参加への敷居を高くしたが、参加者は半数を超えている。深田萌百副会長=写真(右)=(同)と小川拳副会長=写真(左)=(同)は「以前と比べて、みんなの気持ちのもち方が変わり、いじめに対して関心をもっていると思う」とみる。
リボンキャンペーンは現生徒会の任期満了(来年9月)まで続くが、今後、いじめに関する意見や要望を投函してもらう意見箱を設置するアイデアも温めている。
- 傍観者から仲裁者に…
いじめ情報共有50%・職員アンケート結果
特集「いじめ問題浦安市」
米国では校庭で起き、仲裁者が多い、日本では教室で起き、仲裁者が少ない―。日米で傾向に差のあるいじめ。浦安市では、傍観者をいかに仲裁者にできるかにポイントを置いて、総合的ないじめ対策に取り組んでいるという。
いじめは「一方的」「継続的」「身体的、精神的な攻撃」「深刻な苦痛を感じる」こと。いじめが起きていると思われる場合には状況の確認を当然行うが、本人が「いじめを受けている」と訴えれば、学校として、保護者も交えて対応している。 11月には、文科省のいじめ緊急対策に基づいて、職員に対するアンケートを実施。@指導体制A教育指導B早期発見、早期対応C家庭、地域との連携―の4分野20項目にわたって4段階で教諭一人ずつに問うた。市全体としての結果は、「教育指導「と「早期発見、早期対応」は80%以上が「できている」「おおむねできている」と答えた。一方、「指導体制」のうち「教職員間の共通理解を図っている」は50%しかできておらず、特に中学校で充分でない傾向が強かった。「家庭、地域との連携」にいたっては「できていない」「あまりできていない」が50%を占め、大きく弱かったという。各学校は自校に足りない面を補うため、事例を基に考えるものやいじめの構造を根本から学び直すなど、さまざまな研修を11月24日までに実施した。
いのちの大切さや人権、防犯、などさまざまな分野を学ぶ県事業「いのちを大切にするキャンペーン」は、浦安市内では学校ごとにテーマを選んで1学期に実施したが、改めていじめをテーマに市内全小・中学校で実施させ、子供や教諭にいじめをなくすことを再認識させている。
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